深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【Radiohead入門】最初に聴くべきオススメ7曲と、全アルバム100曲解説(最新作まで)

レディオヘッドってたまに名前聞くけど、代表作はよく知らない」

音楽好きな方でも、みんなきっとそんな感じですよね。

Radioheadレディオヘッド)は2019年現在においても、“世界一クリエティブなバンド” とまで言われていますが、日本で知名度がそこまで高くないのは、彼らの楽曲の良さが理解しにくいからに他なりません。

問題は「オススメ曲」にあります。人気曲と思って、ほぼ全員が『Creep』から聴き始めるんですよね。そしてある人は「ギターのガガッってのがカッコいい!」と言い、ある人は「よくあるロックバンドじゃん、つまんね」って言うんです。 

あえて言わせてください。

それレディオヘッドじゃないですから!

『Creep』ってデビュー曲のスマッシュヒットに過ぎないんです。本人たちも全く気に入っていなかったにも関わらず、曲があまりにもキャッチャーなため、最初に聴くべき曲として世間に広まってしまってるんです。これって、ビートルズが『ラブ・ミー・ドゥ』のバンドと言われているようなものですよね。 

ただレディオヘッドが理解されにくいのは、彼ら自身のせいでもあります。フロントマンであるトム・ヨークの内省的な性格のせいもあり、アルバムごとに音楽性がガラッと変わるのです。だからその背景を知らずに無邪気に聴くと、必ず悲しい思いをするのです。 

私の周りでも、

Creep良かったから他の曲聴いてみたけど、ボソボソ歌っててよくわかんない

みたいな声もよく聞きます。なんてもったいない!

そもそもレディオヘッドはアルバムという単位に人一倍こだわりが強いバンドです。iTunesでシャッフル再生するのには向いていないんです。 

 

じゃあ一体どの曲から聞けば良いのか!?

そんな方に向けて、1作目から9作目(2019年現在:最新作)まで、全オリジナルアルバムの解説と、収録全曲にひとことレビューをつけました!オススメの曲には高い評価をつけています。人気曲はもちろん、隠れた名曲にも出会えるはずです!

 

まずは「★4」の7曲だけ聞いてみましょう!アルバムの解説も合わせて読むと理解が深まると思います!

(「★3」も100曲中26曲に絞り込んだので、あわせて33曲は必聴です!)

 

 

<評価基準(0〜4の5段階)>
ーーーーーーーーー
-:普通の良い曲
★:一度は聴く価値がある曲
★★: 間違いなく名曲
★★★: 音楽史上最も優れた曲のひとつ
★★★★: もはや神の奇跡
ーーーーーーーーー 

 f:id:jellyandbeans:20190331214144j:plain

【1作目】Pablo Honey(パブロ・ハニー)

レディオヘッド黒歴史。最も有名にして、最大の厄作『Creep』を収録している。はっきり言って、プロデューサーとバンドが噛み合っておらず、何がしたいのか全くわからないアルバム

(のちにバンドは次作「The Bends」を本当のデビューアルバムだと言い張り、この作品をなかったことにしている)

<アルバム合計・・・★6> 

曲名 評価
1.You
変拍子ギターリフが癖になるオープニングチューン
2.Creep
極めてオーソドックスなコード進行のラブソング。サビ前のディストーションギターが印象的。
★★
3.How Do You?
日曜の朝に庭で水浴びをしてるみたいな曲
-
4.Stop Whispering
シンプル・イズ・ベストなポップソング。やっぱり最後は叫ぶ
5.Thinking About You
夜中に書いたラブレター
-
6.Anyone Can Play Guitar
若いバンドが苛立ちに任せて演奏したようなギターポップ(実際そう)
7.Ripcord
アルバムを埋めるためだけの曲
-
8.Vegetable
アルバムを埋めるためだけの曲2
-
9.Prove Yourself
アルバムを埋めるためだけの曲3
-
10.I Can't
アルバムを埋めるためだけの曲4
-
11.Lurgee
アルバムを埋めるためだけの曲5
-
12.Blow Out
アングラ感が漂うギターソング。浮遊感を出そうと奮闘するメンバーの努力が見える。後半のトムは歌うことすら面倒になった模様

 

  

 

f:id:jellyandbeans:20190331214222j:plain

【2作目】The Bends(ザ・ベンズ

音楽的にはまだ一般的なギターバンドの域にある作品。

『Creep』のスマッシュヒットのせいで、彼らは望まない世界ツアーを延々と繰り返させられ、疲弊しきっていた。そんな中、前作でやりたいことが全くできなかった反省を糧に、彼らは見事なギターポップアルバムを完成させた。本当の意味でのデビューアルバム。

<アルバム合計・・・★20> 

曲名 評価
1.Planet Telex
浮遊感に包まれるエフェクトたっぷりのギターソング。Radioheadの本当の始まりを告げるオープニング曲
★★★
2.The Bends
周りの全てに怒りをぶちまけるようなロックソング。複雑な展開は何度聞いても新鮮
★★
3.High and Dry
良質なアコースティック・ポップソング
★★
4.Fake Plastic Trees
至極のアコースティック・ラブソング。後半の盛り上がりは展開・歌詞ともにCreepの「美しさ」を昇華しつつも、遥かに高い視座でまとめられている
★★★★
5.Bones
3本のギターが淡々と役割を演じるポップソング
-
6.(Nice Dream)
優しいメロディが包み込むアコースティックソング。終盤に爆発し、また戻ってくる
-
7.Just
数えきれないほどのコードが詰め込まれたギターロック。アウトロのジョニーの狂ったソロは必聴
★★★
8.My Iron Lung
オープニングのリフが印象的な、一見穏やかなポップソングだが、その実はCreepの「ダーティさ」を昇華したロックソング。
★★★★
9.Bullet Proof..I Wish I Was
優しいメロディが包み込むアコースティックソング。こちらは最後まで壊れない
-
10.Black Star
ナイーブな青年のラブソング。特に語ることはない。
-
11.Sulk
頑張って展開を作りました、というのが透けて見えるギターソング。Ok Computerと比べると見劣りする音作り。
-
12.Street Spirit (Fade Out)
アコースティックギターアルペジオが美しい1曲。こんな悲しみに満ちた曲がシングルカットされるのはレディオヘッドくらいだろう。
★★

 

 

 

f:id:jellyandbeans:20190331214307j:plain

【3作目】Ok Computer(OK コンピューター)

20世紀のギターロックを完成させたとまで言われる名盤。 

前作『The Bends』のヒットを受け、レディオヘッドは内容・期間ともに、自由にアルバムを制作してよいことになった。レーベルのこの判断は、レディオヘッドは才能を一気に開花させることとなる。

また、新たなプロデューサー(ナイジェル・ゴッドリッチ)を迎えたことも大きかった。彼の参加により、表現できる音の幅が飛躍的に広がったのだ。そこにはピアノやストリングスなどの楽器だけでなく、様々なエフェクターやミキシング技術も含まれる。(ナイジェルはその後の全作品でプロデューサーを務め、いまでは6人目のレディオヘッドと言われている)

ギターという楽器の限界を確かめるように、彼らは頭の中をそのまま音として表現すべく、ありとあらゆるアプローチを使った。そうして完成したのが『OK Computer』だった。

 

<アルバム合計・・・★23>

曲名 評価
1.Airbag
まるで神話のように全ての楽器が絡み合う名曲。ギターでこれほどの広がりを作れるのかと驚かされる。
★★★
2.Paranoid Android
Radiohead史上最高と評されるロックソング。二転三転する展開はまさにボヘミアンラプソディそのもの
★★★★
3.Subterranean Homesick Alien
穏やかな田園風景を思わせる作品
-
4.Exit Music (For a Film)
アコースティックギターとオルガンが奏でる悲劇。後半のディストーションベースが印象的。
★★
5.Let Down
クリーンな3本のギターアルペジオが絡み合うポップソング。明るい曲調と救いのない歌詞の対比は、これぞレディオヘッド
★★★
6.Karma Police
イギリスの伝統を受け継いだようなピアノメロディが印象的。ラストの悲痛な叫びは聴く者の胸に突き刺さる。
★★
7.Fitter Happier
Macの合成音声が無機質に語る曲。ジョージ・オーウェル1984の世界。
-
8.Electioneering
怒りをぶちまけるためだけに作られたような曲。良くも悪くもメチャクチャ。
-
9.Climbing Up the Walls
深い穴の奥底から這い上がるように、じわじわと終焉に向かって展開していく。ストリングスとディストーションギターが全てを飲み込む。
★★★
10.No Surprises
シンプルなリフにシンプルなコード。あまりに完成されているため、半世紀前から存在していたかのような錯覚に陥る。一方で救いのない歌詞が曲に深みを持たせることに成功している。
★★★
11.Lucky
Ok Computerでは珍しい「まとも」なギターソング。まるで現実から目を背けたがっているように、泣き叫ぶジョニーのギターリフが印象的。
12.The Tourist
Ok Computerを締めくくるにふさわしい、現代社会への警鐘。サビの「Hey man, slow down...」と繰り返される叫びは涙なしに聴くことはできない。
★★

 

  

 

f:id:jellyandbeans:20190331214332j:plain

【4作目】Kid A(キッド・エー)

ロックの歴史を変えた名作

前作同様、自由な制作期間を与えられたものの、『Ok Compuer』においてギターロックで出来ることをやりきってしまった彼らは、もはや進むべき道を失っていた

行くあてのない制作期間の中で、彼らは既成概念からの脱却を図った。ギターを使う必要はない。4拍子に従う必要はない。そうしてメンバーは、ギタリストやベーシストであることをやめ、楽器の垣根を超えた音づくりに取り組み始めた。

もともと全員が卓越したプレイヤーであった彼らは、ピアノ、オンド・マルトノ(電子楽器)、サックス、バイオリン、エレクトーン、そしてコンピューター・・など、ありとあらゆる楽器をバンドに持ち込み、見事にロック音楽として融合させた

『Kid A』はよく「エレクトロニカに傾倒したアルバム」と評されるが、それは正しくない。前作までのギターロックとの差が大きすぎてその点が際立ってしまいがちだが、前述の通り「いろんな楽器と電子加工を取り入れた」くらいの方が表現としては適切だ。バンドにとってはごく自然な「進歩」だったのだから。

 

<アルバム合計・・・★24>

曲名 評価
1.Everything in Its Right Place
電子ピアノのリフに乗るのは、コンピューター加工されたトムの声。この曲の誕生により、ギター・ベース・ドラムがなくてもロックソングが作れることが証明された。
★★★
2.Kid A
心地よい電子音が聴く者を抱き寄せ、包み込んでくれる。実験音楽でありながら王道。
★★★
3.The National Anthem
不穏なベースラインが周囲の全てを巻き込みながら進行していく。中盤から加わるブラスバンドがまるで交通渋滞のように折り重なり、不協和音がピークを迎えたところで曲が終わる。
★★★★
4.How to Disappear Completely
アコースティックギターと電子楽器(オンド・マルトノ)による抒情詩。不安定な感情が不協和音として表現される終盤は見事としか言いようがない。これほど透明感のある楽曲を、私は知らない。
★★★★
5.Treefingers
電子音とエフェクターで構成されたインスト曲。もはやどのように音が作られたかは謎。
-
6.Optimistic
規則的なタムが印象的なギターロック。この曲に触発されて反グローバル企業活動に参加したイギリス青年たちが後を絶たなかった。
★★
7.In Limbo
変拍子ギターソング。不安を誘うアルペジオが印象的。
-
8.Idioteque
攻撃的なドラムマシーンにシンセサイザーのリフが繰り返される。ダダイズムからの影響による支離滅裂な歌詞が特徴的。意外なことにKid Aでテクノソングと言えるのはこの曲だけだ。
★★★
9.Morning Bell
穏やかな電子ピアノから始まるが、次第に外観が崩壊していく作品。一瞬だけ顔を覗かせた美しさは、まるで巧みな進化を遂げた食肉植物のようだ。絶望が口を開いて待ち構え、聴く者を闇の奥底へと引きずり込む、あとには無だけが残される。
★★★
10.Motion Picture Soundtrack
オルガンの旋律がただひたすらに美しい作品。「I will see you in the next life(来世で会おう)」という歌詞はニヒリズムの究極系。
★★

 

 

 

 

f:id:jellyandbeans:20190331214348j:plain

【5作目】Amnesiac(アムニージアック)

前作の制作期間に作られた楽曲のうち、『Kid A』に収録されなかったものを集めた作品。ただし残り物と侮るなかれ。『Kid A』は表題曲「Kid A」に合う曲だけを集めたコンセプトアルバムだったため、どれだけ優れていても、コンセプトが異なる曲は収録されなかったのだ(どの曲を収録するかでバンドは解散の危機を迎えたほど)。

そのため『Kid A』に比べ、コンセプトアルバム感は薄くなっており、脱ロックのための様々なアプローチを堪能できるアルバムとなっている。

 

<アルバム合計・・・★17>

曲名 評価
1.Packt Like Sardines in a Crushd Tin Box
電子音とつぶやくような歌声。感情を押し殺すように、全ての音がエフェクターにより熱量を削ぎ取られている。だがそれが不思議と心地良い。
2.Pyramid Song
不安定なコード進行によるピアノとストリングス、そしてトムの歌声が奇跡的に絡み合う名曲。もはや神話の世界。
★★★
3.Pulk/Pull Revolving Doors
サンプリング音源をつなぎ合わせた楽曲。もはや曲なのかすら怪しい。
-
4.You and Whose Army
静かなアコースティックギターによる曲。終盤、ピアノが加わると曲調が一変する。まるで突然戦争が始まったかのように。隠れた名作。
★★★
5.I Might Be Wrong
これをギターロックと言っていいのだろうか。どの楽器も、リズムを刻むことだけを目的として呼応し合う。絶妙なアンバランス。
★★
6.Knives Out
標準的なロックの構成。楽器も展開もこれといった特徴はない。なのに、何故こんなにも悲しいのだろう?
7.Morning Bell
Kid Aに収録された同名曲の別アレンジ。攻撃的な印象は薄れ、幸福に包まれているようにすら思える。だが靄の中で正常な判断力を失った白痴のように皮肉めいている。
-
8.Dollars and Cents
スピード感を持ったベースラインとドラムが曲を牽引する。中盤以降の展開と「Why don't you quiet down?(静かにしてくれないか)」のリフレインが印象的。資本主義への開けっぴろげな批判。隠れた名曲。
★★★
9.Hunting Bears
ギターと単一電子音の物悲しいインスト曲。
-
10.Like Spinning Plates
全編逆再生で構成された楽曲。もはやどのように作られたかは想像すらつかない。
★★
11.Life in a Glasshouse
ピアノとトランペットというジャズの楽器構成。トムの「Only, only, only...(ぼくはただ...)」という叫びとトランペットが絡み合う終盤は、悲痛さの一言。
★★

 

 

 

f:id:jellyandbeans:20190331214430j:plain

【6作目】Hail to the Thief(ヘイル・トゥ・ザ・シーフ)

音楽的プレッシャーから解放された彼らは、前2作の世界ツアーで、電子音楽をライブアレンジし、ギターやエフェクターなど、フィジカルな楽器で演奏できるようになっていた。

そんなロックバンドとして進化を遂げた彼らが、当時の衝動をそのままアルバムに閉じ込めた、いわば前2作とは真逆のプロセスで作り上げた作品である。(1曲に凝りすぎて時間をかけすぎないこと、無闇に長い曲を入れないこと、などの取り決めをしていた)

また、本アルバムの制作年である2002年は、世界情勢が緊迫した時期でもあった。多くのアーティストが反戦を掲げていたように、レディオヘッドも戦争や権力者への嫌悪感をひときわ露わにしていた。そのため『OK Computer』以来意識的に取り込んでいた社会風刺色が、最も色濃く出ている作品ともなっている。

 

<アルバム合計・・・★21>

曲名 評価
1.2 + 2 = 5 (The Lukewarm.)
静かなイントロは、中盤以降、攻撃的なギターとボーカルに塗りつぶされる。Paranoid Androidに並ぶ展開力を持つ風刺ソング。
★★★★
2.Sit down. Stand up. (Snakes & Ladders.)
これまた静かなイントロから一変、中盤から攻撃的なリズムに埋め尽くされる。暗い空を覆い尽くす弾幕から逃げ惑うように。
★★★
3.Sail to the Moon. (Brush the Cobwebs Out of the Sky.)
ピアノバラード。夢の中に誘うような優しさ。
-
4.Backdrifts. (Honeymoon is Over.)
前2作のコンピューティングシステムを平然と使いこなした作品。電子音とドラムマシーンを巧みにポップソングに融合している。
-
5.Go to Sleep. (Little Man Being Erased.)
彼らが卓越したギタープレイヤーだと再認識させてくれる作品。ただ、なぜこの曲がシングルカットされたかは謎。
6.Where I End and You Begin. (The Sky Is Falling In.)
楽器構成としてはKid A / Amnesiacと同一なのだが、明らかにロックだと認識できる音作りは何なのだろう。隠れた名作。
★★
7.We Suck Young Blood. (Your Time Is Up.)
ピアノと最低限なギターのみで構成された楽曲。コーラスと手拍子が印象的。終盤のピアノによる盛り上がりは必聴。
8.The Gloaming. (Softly Open our Mouths in the Cold.)
ジョニーが打ち込んだ電子音のリズムにトムがボーカルをつけた作品。
-
9.There There. (The Boney King of Nowhere.)
ダブルタムのリズムが印象的なギターソング。コードの展開や演奏に際立った部分は少ないにも関わらず、なぜか聴く者の魂を揺さぶる力を持つ名曲。
★★★
10.I Will. (No Man's Land.)
ギターの弾き語り。静かな怒りに満ちた曲。
-
11.A Punchup at a Wedding. (No no no no no no no no.)
ベースラインが印象的なピアノロック。それぞれの楽器が伸びやかに演奏されており、開放感が心地よい。
12.Myxomatosis. (Judge, Jury & Executioner.)
歪んだシンセサイザーのリフが癖になる名曲。トムのボーカルはもはや歌の枠を超え、詩の朗読にすら思える。
★★★
13.Scatterbrain. (As Dead as Leaves.)
シンプルなギターバラード。アルバムに入ったのが不思議なほど平凡な作品。
-
14.A Wolf at the Door. (It Girl. Rag Doll.)
美しい旋律と、それを台無しにするようなトムのボーカルが感動的。Myxomatosis同様、怒りをそのままセリフにして乗せたような楽曲。
★★★

 

 

 

f:id:jellyandbeans:20190331214852j:plain

【7作目】In Rainbows(イン・レインボウズ)

長年いがみ合っていたレーベルとの契約が満了し、本当の意味での自由となったレディオヘッド。彼らは原点に立ち返り、自分たちが満足する作品を作ろうと思い立った。そして完成したのが『In Rainbows』というアルバムだ。

この作品はキャリアの集大成と呼ぶにふさわしく、ストリングスを中心とした多彩な楽器や、新しいロックのありとあらゆるアプローチが用いられている。全ての楽曲が高いレベルで構成されていることから、21世紀の『OK Compuer』とも評される。Radioheadの全アルバムの中でナンバーワンにあげるファンも多い。

 

<アルバム合計・・・★20>

曲名 評価
1.15 Step
5拍子のダンスチューン。ボーカルとリズム隊、電子楽器が見事に融合し、我々に新しい世界を見せてくれる。
★★★
2.Bodysnatchers
疾走感のあるギターロック。トリプルギターがシンプルに入ってくるのはもはや伝統芸。
3.Nude
最低限の音数で表現されるバラード。全ての音が見事なまでに透き通っている。ファルセットとストリングスが織りなすエンディングが印象的。
★★★
4.Weird Fishes/Arpeggi
トリプルギターがアルペジオを奏で、次第に収束していく。海の底を漂うような心地よさ。
★★
5.All I Need
重々しいベースラインに美しい旋律が絡み合う。エンディングに向かうピアノとシンバルは圧巻。
★★★
6.Faust Arp
ミニマル構成のバラード。神秘的なアコースティックギターのメロディが印象的。
-
7.Reckoner
ひたすらにファルセットが美しい楽曲。コードを展開させずにここまで広がりを持たせられる編曲センスには脱帽させられる。
★★
8.House of Cards
標準的なバンド構成で描かれるバラード。5分超えの曲に関わらず長さを感じないのはなぜだろうか。
9.Jigsaw Falling into Place
アコースティックな楽器構成で紡がれるロックソング。後半にエレキギターが加わり、疾走感はピークを迎える。
★★★
10.Videotape
ピアノの弾き語り曲。悲しげな音色と対照的に、強い意思が感じられる作品。
★★

  

 

f:id:jellyandbeans:20190331215025j:plain

【8作目】The King of Limbs(ザ・キング・オブ・リムズ)

In Rainbows』で満足したバンドメンバーは、しばらく各々のソロ活動へといそしむことになる。そして前作のリリースから2年後、再びスタジオに集結した彼らは、それらの経験を音楽的に統合しようと意欲を燃やした。だがその挑戦は見事に失敗している

トム・ヨーク以外のメンバーによる作曲も増えたことも要因だろうか、アレンジにダブや過度なドラムリズムを要求し、メンバーもそれを咀嚼できないまま形にした。結局端々でハーモニーが瓦解しており、何がしたいのかわからないアルバムになってしまっている。

だが彼らはそれで良いと思っていたようだ。今までの徹底的なこだわりの方が異常だったのだ。メンバーそれぞれが自身の活動の場を持ち、広い視野を持てていた。『The Bends』〜『In Rainbows』まで20年間続いた、“Radiohead”というモンスターに対しメンバー5人がNOを突きつけたのだ。

ちなみに後日、全楽曲を他アーティストがリミックスした『TKOL RMX 1 2 3 4 5 6 7』というアルバムが、バンドから正式にリリースされている。もちろんお遊びの側面もあるだろうが、彼ら自身がオリジナルが気に入っていない、もしくは自身で磨き上げる必要性を感じなかった、というのが内情だろう。

 

<アルバム合計・・・★5>

曲名 評価
1.Bloom
全ての楽器が決まったパターンを繰り返すアンビエントソング。
★★
2.Morning Mr Magpie
小刻みなギターが外壁を形取るロック(?)チューン。
-
3.Little By Little
エキゾチックなメロディが印象的なギターソング。
-
4.Feral
不穏な雰囲気のインスト曲。
-
5.Lotus Flower
三点を描くベースラインが印象的。バラードでありながら、ダンスの要素を取り入れた珍しい楽曲。
★★★
6.Codex
シンプルなコード弾きのピアノソング
-
7.Give Up The Ghost
多重録音のコーラスが印象的なアコギ弾き語り。
-
8.Separator
軽快なリズムで描かれるラブソング
-

 

 

 

f:id:jellyandbeans:20190331215059j:plain

【9作目】A Moon Shaped Pool(ア・ムーン・シェイプト・プール)

前作のリリースから、5年のブランクの後に制作された。この時期が30年のバンド生活において、全てのプレッシャーから解放された最も幸せなひとときだったのではないだろうか。

だが不幸はたいていこういう時に訪れる。ライブツアー中に長年バンドを支えたクルーがステージ崩落に巻き込まれて亡くなり、レコーディング中にナイジェルの父親がガンのために逝去、そしてトムも23年間寄り添った妻と離別することとなった(その数ヶ月後、彼女はガンのため亡くなった)。それらの出来事のためだろうか、本作品には「悲しみ」や「厭世感」が色濃く現れることとなった。

音楽的には、ジョニー・グリーンウッドがオーケストラを参加させた(彼は映画音楽作家やオーケストラとしても活動している)ことで、ピアノと弦楽器をフィーチャーするアレンジが増えた。そのため重厚さ・芸術性が際立つ作品に仕上がっている。

こうしてみると、このアルバムは「レディオヘッドという旅」の終着点のように思える。それほどに成熟さを感じさせる作品なのだ。

 

<アルバム合計・・・★18>

曲名 評価
1.Burn The Witch
幾重にも重なるストリングスがリズムとメロディを描き出す名作。アウトロの不協和音は現代社会の痛烈な風刺。
★★★
2.Daydreaming
ピアノによる壮大なアンビエントソング。間奏のアルペジオがただひたすらに美しい。
★★★★
3.Decks Dark
ピアノバラード。不安を誘うコーラスと曲中盤の展開が心地良い。
4.Desert Island Disk
トムのギター演奏が冴えるバラード。
-
5.Ful Stop
不吉なベースラインが周囲を巻き込んで進む。ギターリフが加わり終焉に向かって加速する。
★★★
6.Glass Eyes
アンビエントなピアノメロディが印象的。周囲を取り巻くオーケストラはもはや現代クラシック。
-
7.Identikit
軽快なドラムのリズムは中盤で一転する。秘かな人気曲。
8.The Numbers
アコースティックギターとストリングスの上質な絡みが楽しめる作品
-
9.Present Tense
ボサノヴァのリズムで絡み合うギターがひたすらに美しい。もはやアート。
★★★
10.Tinker Tailor Soldier Sailor Rich Man Poor Man Beggar Man Thief
エレクトーンのリズムが安心感を与えてくれる。中盤以降のオーケストラは本アルバムでも一番の存在感。
-
11.True Love Waits
淡々とピアノの音色が響くラブソング。もはや現代アート
★★★

 

 

さいごに!

さて。いかがだったでしょうか。

こうしてみると、彼らがいかにして音楽のジャンルを飛び越え、幅を広げてきたかが良くわかります。どのアルバムも極めてシンプルな動機で作られてるんですよね。まあ、それを形にできるのは彼らの才能がとんでもないからなのですが。

 

気に入ったら歌の「メッセージ」もみてみよう!

今回はあえて触れずにきましたが、彼らのもう一つの魅力は「メッセージ性」にあります。それは、政治や一般大衆への批判、環境破壊への警鐘、多国籍企業への嫌悪など、ありとあらゆるものに向けられています。

レディオヘッドが “世界一クリエイティブ” と言われる所以は、音楽的に素晴らしいだけではなく、音楽を通して「我々は人としてどうあるべきか」を説く、数少ないアーティストだからなのです!

 

各曲の歌詞和訳や解説も、ぜひ覗いてみてください。よりレディオヘッドの素晴らしさを感じることができますよ!

 

 それではまた!

 

 

【歌詞解説】True Love Waits / Radiohead - 3つの視点で描かれる「本当の愛」

この曲が最初に発表されたのは1995年12月のフランス公演。
それから20年後、『A Moon Shaped Pool』に収録されるまで幻の名曲とされてきました。

 

【日本語訳】

私は信念を捨てるわ
あなたとの子供を授かれるなら
私は姪っ子のように着飾って(※)
あなたの膨れた脚を洗うわ(※)

だからどうか
どこにも行かないで
行かないで

僕の生活なんてどうでもいいんだ
ただ時間を潰すみたいにさ
君の小さな手
君の狂おしいほどかわいい笑顔

だからどうか
どこにも行かないで
行かないで

本当の愛は待っている
幽霊の出る屋根裏部屋で
本当の愛は生きている
ペロペロキャンディとポテトチップスの上で

だからどうか
どこにも行かないで
行かないで

 

【歌詞】

I’ll drown my beliefs
To have your babies
I’ll dress like your niece
And wash your swollen feet

Just don’t leave
Don’t leave

I’m not living
I’m just killing time
Your tiny hands
Your crazy kitten smile

Just don’t leave
Don’t leave

And true love waits
In haunted attics
And true love lives
On lollipops and crisps

Just don’t leave
Don’t leave

 

【解説】

f:id:jellyandbeans:20190311211938p:plain

『True Love Waits』が最初に発表されたのは遡ること20年(!)、1995年12月のフランス公演とされています。『The Bends』のツアー中だったレディオヘッドが、トムのアコースティックギターとキーボードの構成でファンに初披露しました。

そこから『OK Computer』『Kid A』・・そして『In Rainbows』、毎回レコーディングにチャレンジするものの、満足のいくアレンジに仕上がらず、なかなかスタジオアルバムに収録されずに来ました。

※『Kid A』の収録時も、エドは「この曲の持つポテンシャルはとんでもないものだ。なんとか形にしようとしているが・・・」と語っていた

 

そして2016年5月、満を持して『A Moon Shaped Pool』に収録されました。最初のギターポップから一転、多重ピアノによるアンビエントソングとして。この「熟成」の裏には何があったのでしょうか。

トムがこの曲にかけた熱意に想いを馳せながら、歌詞を見ていきましょう。

 

ラブソングに似つかわしくない不思議な言葉選び

『True Love Waits』の歌詞には、ところどころ不思議な響きが含まれています。

まず気になるのは「niece(姪っ子)のように着飾る」や「swollen feet(膨れた脚)を洗う」という表現。ただのラブソングにはふさわしくないですよね。(フリフリのドレスを着たトムなんて想像できませんし)

2番では「君のtiny hands(小さな手)」。1番の「You」が子供を作る相手だとすると、奥さんの手をそんな風に表現するでしょうか?

続いて3番の歌詞。「本当の愛はhaunted attics(幽霊の出る屋根裏部屋)で待っている」。「本当の愛はポテトチップスの上で生きている」。もうこれに至っては、もはやどういうこと?という感じですよね。

そして、極め付けはサビで繰り返される「Don't leave(どうか行かないで)」という表現。主人公が幸福の中にいるのなら、これは一体、誰に向けた言葉なのでしょうか?

 

どうやら『True Love Waits』の歌詞は多義的な意味を持っているようです。ちょうど『Fake Plastic Trees』でトムが見せた、複数人の視点から1つのものを描くテクニックだと解釈するのが良さそうです。

※『The Bends』〜『OK Computer』期のトムは、複数の主人公を用いた歌詞を好んで使っていました。『Kid A』以降の一人称的な描写手法を確立するまでは、彼のレトリックセンスは荒削りなものでした

 

そしてここにはただの愛だけではなく、何か悲しみに似た感情さえ感じ取ることができます。それは一体何なのでしょうか?

 

男女の愛、子どもへの愛、そして親への愛をひとつのキャンバスに

まず、トムは「本当の愛」を描くために「愛」を3つに分類しました。

  1. 男女間の愛
  2. 親から子への愛
  3. 子から親への愛

そしてこれを、1番〜3番でそれぞれの視点から描いたのです。

さらに面白いのは、1番の歌詞を「男女」の2人の視点を1つにオーバーラップして描いたことです。だから不思議な響きを持っていたのですね。

 

1番の歌詞を見ていきましょう。
まず男性視点から見ると、このような訳になります。

僕は信念に固執しないよ
君との子供を持てるなら
僕は姪っ子のように着飾って
君の膨れた脚を洗うよ

ここでの「姪っ子のように」は、トム自身のバンドマンとして外で喚き散らしている姿と真逆の存在(甲斐甲斐しいものの象徴)として利用されています。「膨れた脚」というのは、妊娠をした女性に見られる脚のむくみのことでしょう。厭世的な自分を捨て、現実に向き合うよ、ちゃんと1人の男性として君に寄り添うよ、という意思表明です。

 

そして女性の視点から見ると、このような訳になります。

私は信念を捨てるわ
あなたとの子供を授かれるなら
私は姪っ子のように着飾って
あなたの膨れた脚を洗うわ

こちらの方が散りばめられた単語はしっくりきますが、やはり1点「膨れた脚」は不思議な響きを持ちます。男性の脚が膨れるとしたら・・それは打撲?はたまた怪我?一体、何でしょうか。

この謎は次のサビに答えがありそうです。

だからどうか
どこにも行かないで
行かないで

結婚してさあ子供を授かろうという女性は、普通「どこにも行かないで」なんて言いません。この言葉には何か「悲しみ」に似た感情が見え隠れしています。きっとこの男性は二度と帰ってこれない状況にいるのです

「彼」が脚が膨れるほどの怪我を負っており、もう帰ってこないのだと想定すると、彼は大怪我を負ってしまい、天国に旅立とうとしているのです。(おそらくその傷は戦争や闘争で負ったものです)。これから人生を共にしようとする相手と永遠にさよならをしなければいけない悲しみ・・・。

私は信念を捨てるわ
あなたとの子供を授かれるなら

(中略)

だからどうか
どこにも行かないで

男女の愛としてこれほど深いものがあるでしょうか。トムは愛をただの恋愛感情として描くことをやめ、より高次な、普遍的な愛こそが「本当の愛」なのだと説いたのです。

 

また余談ですが、女性視点では別の見方をすることもできます。

トムがよくやる方法ーー聖書や寓話からの引用として捉える方法です。聖書を引用元とするのであれば、「彼」をキリスト、「女性」をマグダラのマリアと考えるのが面白いかもしれません。マリアはキリストの最後を看取る女性とされています。裸足で鞭を打たれながら、最後に磔にされた「彼」の脚を、涙で濡らした布で清めるマリア。彼は二度と帰ってこないと知りながら

彼女の心の中にも「本当の愛」が芽生えていたことは想像に難くありません。

 

親になるということ。それは究極の自己犠牲。

2番の歌詞は「親」の視点になります。(ここは主人公を男女どちらにしても同じ訳になるので、便宜上、男性視点としています)

僕の生活なんてどうでもいいんだ
ただ時間を潰すみたいにさ
君の小さな手
君の狂おしいほどかわいい笑顔

 

親になるということは、 人生の主人公を子供にバトンタッチすることです。自分のこれからの人生すべてを捧げて、1人の人間に託すこと。それは究極の自己犠牲です。

トムが第1子、ノアくんを授かるのは2001年。この曲を作った6年後です。きっとそれに先立って彼は子供を授かること、親になることとは何かを本気で考えていたんだと思います。バンドマンとしての自分と、親としての自分。そしてたどり着いたのが「自己犠牲」の精神だったのです。

もちろん当時の彼にとって、親になることは想像でしかなかったと思いますが、その後20年の間にその考えは確信に変わっていったのでしょう。歌詞を変えずにスタジオ録音されたことは、それを物語っています。

そしてその自己犠牲の精神で得たもの(人生のすべて)をもし失ったとしたら・・・。そう考えると彼は居ても立っても居られなくなったことでしょう。その気持ちの中にも「本当の愛」が存在している、彼はそう考えました。

だからどうか
どこにも行かないで
行かないで

いま手にしている幸せも不変のものではない。だからこそ愛おしさを感じるべきだ、というメッセージが隠れているのです。

 

孤独な子供が求めたもの。それは究極的な愛。

いよいよ最後、3番は子供から親への愛です。

ただ普通の子供は、親を当然のことのように感じています。何の疑いもなくごはんを作ってもらい、当然のようにおもちゃを与えてもらいます。トムは親と子供の愛を描くために、いろいろ頭を悩ませたことでしょう。そんなある日、彼はある悲しい事件を耳にします。

(幽霊の出る屋根裏部屋・・・の歌詞は)
トムが、何日にもわたり両親に放置された1人の子供がジャンクフードで食いつないで生き延びた、という話にインスパイアされたものだ。この歌には「嘆願」の意が含まれており、それは「どうか行かないで」という繰り返しで表現されている。

参考:True Love Waits (song) - Wikipedia

まだ幼く力を持たない子供が、孤独の中で取った行動。それは暗い部屋でお菓子で食いつなぎながら、何とかして生き延びるという選択でした。

トムはきっとその事件に強く心を傷めたことでしょう。そしてその子供の心を自分に投影したとき、それが自分の考えていた「究極の愛」なのだと理解したのです。

本当の愛は待っている
幽霊の出る屋根裏部屋で
本当の愛は生きている
ペロペロキャンディとポテトチップスの上で

この子供は救いを待っていたのです。来る日も来る日も・・いつ来るかもわからないその日をーー親の愛を。

だからどうか
どこにも行かないで
行かないで

この嘆願は、力を持たない子供が唯一望む願いでした。そしてこれは、ちょうど神という絶対的な存在に救いを求める人々の比喩でもあるのです。

 

トムは『True Love Waits』において、主人公たちを極限状態に置きました。そこで現れる愛こそが、混ざりっけのない「本当の愛」だと、彼は知っていたのです。

 

レコーディングされたピアノバージョン

彼にとってのラブソングはここで完成していたのかもしれません。巷で歌われる、ラジオの空き時間を埋めるだけのような「愛」とは一線を画す「本当の愛」がこの歌には込められています。

冒頭でも述べましたが、その後20年間、彼はこの歌を形にすべく奮闘することになります。ギターロックバンドとして世界の頂点に立っても、『Kid A』期で誰も手にしていなかった表現手法を手に入れても、『In Rainbows』期でロックを完成させても、彼はこの歌を完成させることはありませんでした。それほどまでに、彼にとってこの曲は特別なものであり、人生を賭して磨き上げるべきものだったのです。

 

そして『A Moon Shaped Pool』期、ついに彼は筆を置きます。このアルバムが持つ「死」への言及が、この歌の終着点だったのです。ギターとキーボードのリズムによるポップさはすべて削り落とされ、この稀代のラブソングは、最低限のピアノによる弾き語りとして録音されました。彼は「死」という極限状態を目前にして、「本当の愛」が輝くのを目にしたのかもしれません。これは皮肉なのか、はたまた運命だったのか・・・。

 

もちろん、アルバムリリース後の公演でも、旧来のアレンジ(ギターポップバージョン)も演奏されているので、バンドの中でも意見が割れているのでしょう。(得にエド・オブライエンはギターバージョンを主張してそうですよね)

きっとファンのみなさんの中でも意見は割れていると思います。でもトムがこの歌詞に込めたかった意味を考えると、壮大なアレンジではなく、ミニマルな構成が最も適しているのではないでしょうか。(とは言いつつも、バンドアレンジも最高に素晴らしいので、冒頭の映像はそちらを引用させていただきました)

 

この歌は、我々が持つ愛という概念そのもの変えてしまう力をもっているかのようです。

今回はそんなトム・ヨーク流のラブソングの紹介でした。

 

 

 

 

<あわせて読めば、もっと深読み>

 

・『True Love Waits』と同時代に作られたラブソング

 

愛する人の死を受け入れることができるか。『A Moon Shaped Pool』収録。

  

・人生を捧げた相手へのレクイエム。『A Moon Shaped Pool』収録。

 

【歌詞解説】Ill Wind / Radiohead - 愚かさが招いた不吉な風

f:id:jellyandbeans:20190118233507p:plain

『A Moon Shaped Pool』の特別版にのみ収録されたボーナストラック。
2019年1月にストリーミング配信が解禁された。
歌詞は止められない出来事を憂う内容となっている。

【歌詞】

Keep your distance
Then no harm will come

No ill wind
Will blow
Will blow

Sudden... words
Must never be spoken

An ill wind
Will blow
Will blow

Keep your cool
Do not give into emotion

An ill wind
Will blow
Will blow

 

【日本語訳】 

距離を保つんだ
そうしたら もう悪いものは来ない
不吉な風も 吹くことはない
吹くことはない

突然投げかけられた言葉
それは決して口にしてはいけない言葉

ああ 不吉な風が
吹いてくる
吹いてくる

冷静になるんだ
感情に流されるんじゃない

ああ 不吉な風が
吹いてくる
吹いてくる

 

【解説】 

"ill wind"(イル・ウィンド)はイギリス英語の口語で使われるもので「悪影響を与えるもの」という意味だそうです。日本語でも「風向きが悪くなってきた」みたいに風を比喩として使いますよね、そんな感覚に近いものだと思われます。

(訳では「不吉をもたらす風」というニュアンスで捉えました)

 

過去に作られた未来の暗示

音作りはギター&ストリングスサウンドに、『In Rainbows』時代の音源をごちゃまぜにしたような構成になっています。エレクトリックピアノアルペジオは最初期の『Arpeggi』を彷彿とさせますし、シンセサイザーのリズムは『Supercollider』のバックトラックをそのまま持ってきたかのようです。

 

 

 

『A Moon Shaped Pool』に収録されてはいるものの、この時期に作られた楽曲たちとは明らかに異なる音作りがなされています。おそらく曲自体は相当前に出来上がっていたのでしょう。

では彼らは『The King of Limbs』にも収録しなかった楽曲を、なぜ2016年になってあえてリリースしたのでしょうか?

 

不吉な風がすぐそこまで来ていた

2016年のイギリスにおける大きな出来事といえば1つしかありません。イギリスのEU離脱決定です。EU全体が難民受け入れで大混乱に陥っていた頃、唯一の島国である大国イギリスは対岸の火事から目を背ける決断をしてしまいました。
(2016年2月20日国民投票の実施を宣言)

参考:イギリスの欧州連合離脱是非を問う国民投票 - Wikipedia

 

そして来たる2016年6月23日に国民投票が行われ、過半数の国民の賛成によりEU離脱が決定づけられました。『A Moon Shaped Pool』がリリースされたのが2016年5月8日。英国を二分する議論がなされていた、まさにそのときだったのです。

 

時代を超えた奇妙な符合

ただ前述の通り、この曲はもっと以前に作られていたはずです。私が思うに、作られた当時は歌詞も全く違う意味を帯びていたのだと思われます。(それはきっと「内なる悪から逃れたくても逃れられない。心の中に"ill wind"が吹いてくる」といったニュアンスだったのでしょう)

 

でも2016年の状況下において、この歌は奇しくも皮肉めいた意味を帯びることになりました。

 

距離を保つんだ
そうしたら もう悪いものは来ない
不吉な風も 吹くことはない

 

おそらくレディオヘッドはここに奇妙な符合を感じ取り、いまがこの曲が世に出るべき時期なのだと考えたのでしょう。(ただしアルバム自体に入れるとせっかくの世界観が崩れてしまうため、2曲しか入っていない全く別のCDとして世に出したのだと思われます)

 

イギリス国民が主権という名の「愚かさ」を振りかざして得た宝箱は、混沌を招き入れてしまうパンドラの箱でもあるのです。EU離脱により、イギリスが、欧州が、そして人類全体が不吉なものに飲み込まれつつある情景が浮かんできます。

 

冷静になるんだ
感情に流されるんじゃない

ああ 不吉な風が
吹いてくる
吹いてくる 

 

発足から25年、このまま本当にイギリスが離脱してしまえば、他の国もそれに続くでしょう。平和と調和の象徴であったはずのEUが崩壊することは、人類の敗北すら意味する未曾有の出来事になります。

 

 

正直、いまの世界情勢は何本かネジが外れたみたいです。

私たちは一体どこに向かっているのでしょうか。

 

 

ああ 不吉な風が 吹いてくる

 

 

 

 

<あわせて読むともっと深読み>

同時期のEU(世界)を象徴したような鮮烈な歌詞

 

【動画紹介】Paranoid Android / Josh Cohen - 完璧なピアノカバー

オーストラリアで活動するJosh Cohen(ジョシュ・コーエン)のピアノカバー。
低評価257に対して、高評価1.4万というとんでもない数値を叩き出している(2018年12月6日現在)

 

「今まで聴いたパラノイド・アンドロイドの中で最高のバージョン」

今日は歌詞解説はお休みして、Rediohead動画の紹介です。

とんでもなく美しいピアノカバーを見つけたのでみなさんにもぜひ聴いていただければと。

まずはジブリ映画を思わせる優雅なフレーズ。幻想的な音色に聴き惚れてしまいますが、だんだんと「これ本当にParanoid Androidなの?」と疑い始める私。そんな心を見透かしたかのように、ゆっくりと複雑な音の歯車たちが首をもたげ始めます。それらのひとつひとつが自分の居場所を探してさまよい始め、そして02:50をすぎたあたりであるべき場所を見つけたかのように『おなじみのフレーズ』が......ここから先はぜひあなたの耳でお確かめください。

 

f:id:jellyandbeans:20181206221723p:plain

 

海外の反応

3:00ころのワイ「は?こんなのパラノイドアンドロイドじゃねえし!」
8:00ころのワイ「なんてこった!今まで聴いたパラノイド・アンドロイドの中で最高のバージョンじゃねえか!」 

 

もう私には何も言うことはない。この贈り物に感謝しかない

 

”Rain down”のパートがただただ美しい

 

低評価つけているやついるね。きっと"that kicking, squealing Gucci little piggy(感情むき出しのグッチを身につけた子豚みたい)"なやつに違いないよ

 

神...何このイントロ

 

レディオヘッドはこの動画を見るべき

 

Paranoid Androidのピアノカバーといえば、ブラッド・メルドーのプレイも有名ですが、私は完璧にこちらの方が好きになりました。この夜長の季節、ずっと聴いていたい作品です。

  

 

<あわせて読むともっと深読み>

 ちなみに歌詞解説はこちら。

 

 

【歌詞解説】Idioteque / Radiohead - 子供が先だ、子供が先、子供が

印象的なシンセサイザーのリフは、メインギターのジョニー・グリーンウッドがポール・ランスキーの『Mild und Leise』(1976年発表)の一節をサンプリングしたもの。

【歌詞】

Who's in a bunker, who's in a bunker?
Women and children first, and the children first, and the children
I laugh until my head comes off,
I swallow 'til I burst, until I burst, until I...
Who's in a bunker, who's in a bunker?
I have seen too much,
I haven't seen enough, you haven't seen it
I laugh until my head comes off,
Women and children first, and children first, and children...

Here I'm allowed everything all of the time
Here I'm allowed everything all of the time

Ice age coming, ice age coming,
Let me hear both sides, let me hear both sides, let me hear both...
Ice age coming, ice age coming,
Throw it in the fire, throw it in the fire, throw it on the...
We're not scaremongering, this is really happening, happening,
We're not scaremongering, this is really happening, happening,
Mobile's working, mobile's chirping
Take the money and run, take the money and run, take the money...

Here I'm allowed everything all of the time
Here I'm allowed everything all of the time
Here I'm allowed everything all of the time
Here I'm allowed everything all of the time

And first, and the children, and first, and the children
And first, and the children, and first, and the children
And first, and first, and the children
And first, and the children
And first, and the children, and first, and the children
And first, and first, and the children
And first, and the children, and first, and the children
And first, and the children, and first, and the children

 

※ bunker … 核実験の観測施設(強者のための避難所)

※ scaremonger ... 戦争や天災などのデマを流して世間を騒がせる人

【日本語訳】

シェルターにいるのは誰だ 
シェルターにいるのは誰だ
女子供が先だ 女子供が先 女子供が先
俺は頭がもげるまで笑う
俺は破裂するまで飲み込む 破裂するまで 破裂するまで
シェルターにいるのは誰だ
シェルターにいるのは誰だ
もう俺は十分見てきた 
いやまだ俺には何も見えちゃいない お前は見ちゃいない
俺は頭がもげるまで笑う
女子供が先だ 女子供が先 女子供が先…

ここで俺は生かされてる
すべてのもの すべての時間
ここで俺は生かされてる
すべてのもの すべての時間

氷河期がくる 氷河期がくる
双方の意見を聞かせろ
双方の意見を聞かせろ 双方の意見を…
氷河期がくる 氷河期がくる
それを火にくべろ
それを火にくべろ それを火に…
俺は陰謀論者じゃない
これは本当に起きていることだ
俺は陰謀論者じゃない
これは本当に起きていることだ
携帯電話がリリリ 携帯電話がチチチ
金を持って逃げろ
金を持って逃げろ 金を持って…

ここで俺は生かされてる
すべてのもの すべての時間
ここで俺は生かされてる
すべてのもの すべての時間

子供が先だ 子供が 子供が先…
子供が先だ 子供が 子供が先…
子供が先だ 子供が 子供が先…
子供が先だ 子供が 子供が先…

 

【解説】

レディオヘッドがテクノロックへ踏み出す大きな契機となった1曲。

印象的な4音のシンセサイザーのリフは、ジョニー・グリーンウッドがポール・ランスキーの『Mild und Leise』(1976年発表)の一節をサンプリングしたもの。(ジョニーが作成した50分にも及ぶ音響デモの中から、トム・ヨークがこの部分をとても気に入り曲に採用したそう)

 

 (↑該当箇所の43秒から再生します)

  

いまここで起きている恐怖

この曲は自分たちを決定的に損なう何かに対する恐怖を描いています。

シェルター(bunker)にいるのは誰だ 
女子供が先だ 女子供が先 女子供が先

bunkerは核実験の観測施設です。

é¢é£ç»å

防空壕」だと被害者のニュアンスが出てしまうので、上記ではあえて「シェルター」と訳しています。冒頭の一節は、逃げ惑う人たちを揶揄したものではなく、最悪の兵器で世の中を混沌へと突き落としておきながら、それを安全なところで見ている人間たちへの怒りなのです。

続く歌詞も、彼らの違う側面への皮肉です。

俺は頭がもげるまで笑ってるだろう
俺はきっと破裂するまで飲み込むんだ 破裂するまで 破裂する

(中略)

金を持って逃げろ
金を持って逃げろ 金を持って

彼らが何を「飲み込む」のかというと、それはきっと金です。軍事力と経済力は同義です。世の中を牛耳る人間たちは兵器をちらつかせ、世界中のお金を手中に収めます。彼らは全てを飲み込むまで満足しないようです。それこそ人類が破滅するまで。

もう俺は十分見てきた 
いやまだ俺には何も見えちゃいない お前にも

トムはこんな世界の負の面を前に「もう十分だ」と考えます。でもすぐさま「まだ何も見えちゃいない」と自己否定します。彼は「いまの世界は間違っているが、正しい世界も必ずあるはずだ」と信じているのです。ジョン・レノンが『Imagine』で示したテーマをたった一文で表現するあたり、トムの文才には本当に驚かされます...。

 

氷河期=冷戦の時代?それとも?

サビでトムとエドがファルセットを奏でた後、すぐに2番が始まります。曲の後半ではより具体的な言及を始めます。

氷河期がくる 氷河期がくる
双方の意見を聞かせろ

(中略)

俺は陰謀論者じゃない!
これは本当に起きていることだ! 

冒頭の「bunker」という言葉選びから、この一節は私たちに核戦争を想起させます。まずは「氷河期」を「冷戦」として捉えてみましょう。「双方」というのは言うまでもなくアメリカとソ連、資本主義対共産主義の対比です。お互いがお互いの主張を繰り返し、決して歩み寄ることがない世界。スイッチ一つで人類は滅亡するという圧倒的恐怖。にも関わらずどちらかの陣営(国)にいる限り、プロパガンダに支配され、何が真実なのかなんてわからない。そんな時代です。

これも一つの解釈ではありますが、トムはここに一つのレトリックを組み込んでいるように思われます。それはこの冷戦の構図を土台とした、地球温暖化への言及です。

レディオヘッドは『Kid A』というアルバム以降、政治や経済の愚かさに言及するようになりました。その矛先は戦争であったり経済搾取であったり、環境破壊であったりします。これら全てに共通するのは、この世界に人間が住めなくなるという圧倒的不可逆的な愚行ということであり、トムはその後発表する多くの楽曲を通して「いまならまだ間に合う」と警鐘を鳴らし続けているのです。

 

子供が先だ、子供が先、子供が...

『Idioteque』の本質的なテーマはここにあります。

映画『デイ・アフター・トゥモロー』でも描かれているように、地球温暖化の後には氷河期が来ます。科学者たちが人間の活動が温暖化を招いていると明確に提唱しているにも関わらず、多くの資本家たちは聞く耳を持ちません。現代社会は炭素の排出を土台にして作られているからです。(どこかの大統領は石油メジャーからの多額の献金を受け、地球温暖化なんてないと言い張っています)

相手の意見を聞かず、お互いが牽制しあっている現状。これはまるで形を変えた冷戦です。我々全員が生きるか死ぬかの瀬戸際にいるにもかかわらず、どちらもが次の一歩を踏み出せずにいます。このブラックコメディみたいな状況を、冷戦という人類史上最大の論争に重ね合わせることでトムは「いままさに起きていることなんだ」と表現しているのです。

 

人間同士の争いなんてしている暇はない。みんなが手を取り合わなければ・・・子供たちはみんな死ななければならなくなる。

子供が先だ 子供が 子供が先

二人の子を持つトムにとって、この叫びは心からの願いなのでしょう。

 

 

<あわせて読むとさらに深読み>

行き過ぎた経済活動が途上国を締め付ける姿を描いています

 

温暖化によって全てが流されてしまった世界を描いています

【歌詞解説】Suspirium / Thom Yorke - トム初の映画サウンド・トラック

トム・ヨークが映画『Suspiria』のために書き下ろした作品。
彼が映画のサウンドトラックを担当するのは初めて。(楽曲提供を除く)
日本公開は2019年1月予定。

【歌詞】

This is a waltz thinking about our bodies
What they mean for our salvation
With only the clothes that we stand up in
Just the ground on which we stand

Is the darkness ours to take?
Bathed in lightness, bathed in heat

All is well, as long as we keep spinning
Here and now, dance behind a wall

Only the old songs and laughter we do
All forgiven always and never been true

When I arrive here, will you come and find me?
Or in a crowd, be one of them?
Wore the wrong sign back beside her
Know tomorrow's at peace

 

【日本語訳】

これはワルツ 私たちが
身体について考え 救済を受けるための
衣服だけを身に付け踊る
ここには我々の立つ地が広がるだけ

この暗闇が私たちの得るものなの?
光を浴びて…熱をくぐり抜けて…

すべてがうまくいく
私たちが回り続けている限りは
いまここで 壁に隠れて踊りなさい

そこには古い歌と笑い声
全ての赦しは 真実だが真実ではない

私が到着したら 迎えに来てくれるの?
それとも群衆に紛れて 隠れてしまうの?
おかしなサインが彼女を包み込む
まるで明日の死を暗示するように

 

【概要】

『Suspirium』は、トム・ヨークがホラー映画『Suspiria』(2019年1月公開/邦題:サスペリア)のために書き下ろした作品。本映画は1977年制作のイタリアの傑作ホラー映画のリメイク作品となっており、『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノが監督を務めることで話題になっています。

 

私はまだ原作・本作ともに観ていないので、何やら暗示的な歌詞だなあという薄っぺらい認識しか持ててないのですが、映画のストーリーを象徴していそうな言葉選びになっていますよね。

あと何気に、トムが映画のサウンド・ドラックを手掛けるのは初なんですよね。Radioheadとして楽曲を提供していたり、ジョニーがポール・トーマス・アンダーソンと名作をいくつも生み出しているので見落としがちでした。それにしても初作品がホラー映画というところもトムらしいというか、なんというか。

 

ただホラー映画苦手なんですよね。心が映画のワンシーンに囚われてしまう気がして...。でも頑張って観ようと思います...ので、歌詞の意味がわかったら解釈を追記します。

(原作知ってるよとか、いち早く観たよという方がいたらぜひ解釈をコメントいただけると嬉しいです)

 

f:id:jellyandbeans:20180916223709j:plain

【歌詞解説】Just / Radiohead - やったのはお前だよ!意味深なPV

トムとジョニーがどれだけコードを組み込めるかを競い合った『The Bends』のシングル曲。
意味深なPVが当時話題となった。(記事内にPVの和訳あり)

 

【歌詞】

Can't get the stink off
He's been hanging 'round for days
Comes like a comet
Suckered you but not your friends

One day he'll get to you
And teach you how to be a holy cow

You do it to yourself, you do
And that's what really hurts
Is that you do it to yourself, just you
You and no one else
You do it to yourself
You do it to yourself

Don't get my sympathy
Hanging out the 15th floor
You've changed the locks three times
He still comes reeling through the door

One day I'll get to you
And teach you how to get to purest hell

You do it to yourself, you do
And that's what really hurts
Is that you do it to yourself, just you
You and no one else
You do it to yourself
You do it to yourself

You do it to yourself, you do
And that's what really hurts
Is that you do it to yourself, just you
You and no one else
You do it to yourself
You do it to yourself

You do it to yourself
You do it to yourself
You do it to yourself
You do it to yourself

 

【日本語訳】

きみはこの悪臭から逃れられない
あいつはこのところずっと あたりをうろついてる
あいつは彗星のようにやってきて
きみを食い物にした(ほかの誰かではなくてさ)

いつかそいつはお前(※1)のところにも来るよ
そしてお前がどれだけクソだったかを告げるんだ(※2)

お前は自分に向かってやったんだ、お前がさ
自身を傷めつけることを
そんなことをお前は自分に向かってやったんだ、お前がだよ
他の誰でもないお前がさ
お前は自分に向かってやったんだ
お前は自分に向かってやったんだ

同情なんて得られないさ
15階から身を乗り出してもさ
お前が部屋の鍵を3度も取り替えたって
あいつはドアをふらっと通り抜けて入ってくる

いつか俺はお前を捕まえる
そしてお前に教えてやる
まじりっけなしの地獄ってやつをさ

お前は自分に向かってやったんだ
お前自身を傷めつけることを
そんなことをお前は自分に向かってやったんだ、お前がだよ
他の誰でもないお前がさ
お前は自分に向かってやったんだ
お前は自分に向かってやったんだ
(※繰り返し)

お前は自分に向かってやったんだ
お前は自分に向かってやったんだ
(※繰り返し)

 

※1 前段落と同じ"You"ですが ここで主語が変わっています

※2 "holy cow"は、驚きや恐怖・不快感を表すスラング。日本語にしにくいのでこのように訳しました

 

【解説】

印象的なコード進行がイントロを飾る「The Bends」のシングル曲。トムとジョニーが、どれだけたくさんのコードを一曲に盛り込めるかを競って作られたと言われています。

 

お前は自分に向かってやったんだ!

この曲も因果応報をテーマにしています。

冒頭はとある人物(女性?)がある男性につけ狙われているシーンから始まります。

きみはこの悪臭から逃れられない
あいつはこのところずっと あたりをうろついてる

その男性はストーカーでしょうか。はたまた財産を狙っている強盗でしょうか。
いずれにせよ、その善良な市民はその男にいたぶられてしまうのです。

あいつは彗星のようにやってきて
きみを食い物にした(ほかの誰かではなくてさ)

ここまでが前談。
悲しいお話から一転、トムたちは徹底的にその悪意に対して糾弾を始めます。

いつかそいつはお前のところにも来るよ
そしてお前がどれだけクソだったかを告げるんだ

お前は自分に向かってやったんだ、お前がさ
自身を傷めつけることを
そんなことをお前は自分に向かってやったんだ、お前がだよ
他の誰でもないお前がさ

ここでもRadioheadお家芸である「追いかける側の者が、実は追われる者であった」というプロットが用いられます。「お前が誰かを破滅に追いやったのなら、誰かがお前を破滅させるのも当然だろう」という因果応報論ですね。

この表現は3rd Album「OK Compuer」の「Karma Police」や、9th Album「A Moon Shaped Pool」の「Burn the Witch」でも見られます。おそらく全アルバムを通してこの「Just」が初なのではないでしょうか。

(こうしてみるとすべてシングルカットされていますね)

 

Radiohead史上、初めてストーリー性を帯びたPV

このPVも意味深げで良いですよね。

男性が普段と変わりなく歩いていたかと思えば、突然道路に寝そべり始めます。街行く人がその理由を聞いてもなかなか答えず・・最後にみんな横になってしまいます。

その理由は明かされませんが、みなさんはどう考えましたか?

 

冒頭に、男性がバスタブに向かい合うシーンをわざわざ入れているので、ここがヒントになる気がしてますが・・どうなんでしょう。(歌詞からは罪の意識的なものだとは思うのですが・・あまりレディオヘッドはキリスト的宗教観を入れないんですよね。)

 

PV内の会話も和訳してみました。参考にどうぞ!

f:id:jellyandbeans:20180825005701j:plain

A「ああなんてことを...ごめんなさい、見えなかったもので...大丈夫ですか?」

男「ああ」

A「どうしたんです、倒れたんですか?」

男「いいや、俺は元気だ。ほっといてくれないか」

A「ああ...酔っ払っているのか」

男「酔っ払ってなんていない」

A「じゃあなんでこんな道の真ん中で寝転がってるんだ?なあ、俺なんかしようか?」

A「おい... なんなんだよ。さあ、起こしてやるから」

男「触るな!」

B「なんだ、どうした?倒れてるのか?」

A「いや...そういうわけじゃないんだが...」

C「怪我してるのかい?」

男「いいや、すまないが諸君、ほっといてくれないか」

D「ちょっとおかしい人なんだよ、きっと」

男「俺は狂ってなんてない。ほっといてくれ」

A「じゃあなんで寝転がってるんだよ。なあ、どうしたのかわけを教えてくれないか?」

男「ああ...それをいうことはできない...それは正しくないことだ」

D「やっぱ狂ってやがる」

C「見て!おまわりさんよ!」

一同「おまわりさん!」

O「大丈夫かい?」

男「大丈夫だ。頼むからここで横にならせておいてくれないか」

O「そういうわけにはいかないよ、お父さん...」

男「触るんじゃない!」

A「なあ...ただわけを話してくれればいいんだ、教えてくれよ!」

男「諸君は知りたいとは思ってない。信じてくれ」

A「あんたは教える意味がないって思ってる、そうだな?...例えば、俺たちがみんな死んでしまうとか、そういうことか?それがあんたが横になってる理由なのか?」

男「違う」

A「教えてくれ!教えてくれよ、一生のお願いだから!」

男「諸君は私が横になっている理由を知りたいのだね」

A「ああ!」

男「それを望んでいるのだね?」

男「わかった、話そう。なぜ私が横になっているかを...きっと神もお赦しくださる...神は我々をお救いになるだろう...諸君には諸君が私に何を問うたのかわかっていないのだから...」

A「いいから教えろ!」

男「***********」

 

<seriph>

- Jesus, I'm sorry. I didn't see you there. Are you okay?

Yes.

- What happened, did you fall?

No I'm fine. Please leave me alone.

- You've been drinking.

I haven't been drinking.

- Why are you lying in the middle of the pavement?

- You could have broken my neck!

- Look... what's wrong? Here let me help you up.

No! Don't touch me!

-- What's the matter with him? Has he fallen?

- No... he hasn't fallen.

-- Is he hurt?

No, please, all of you, leave me alone.

-- He must be mad.

I'm not mad. Just leave me alone.

- Why are you lying down? Why won't you tell me what's wrong?

Look I can't tell you.. ...it wouldn't be right.

-- He must be mad.

-- Oh look Officer!

-- Officer!

- Are you alright?

I'm fine. Please, will you just let me lie here.

- I'm afraid I can't let you do that sir.

Don't touch me!

- Just tell me why you're lying here. Tell me!

You don't want to know, please believe me.

- You don't think there's any point right?

- What, that we're all going to die? Is that it? Is that why you're lying here?

No.

- Tell us! Tell us for Christ's sake!

You want to know why I'm lying here?

- Yes!

You really want to know?

Yes I'll tell you. I'll tell why I'm lying here... ...but God forgive me... ... and God help us all... ...because you don't know what you ask of me.

- Tell us!

 

ぜひ、あなたのアイデアもコメントに書き込んでくださいね。

応援のコメントや「いいね!」もいただけると、とても嬉しいです。

ブログを続けるはげみになるので、よろしくお願いします! 

 

 

<あわせて読むともっと深読み>