深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞解説】Suspirium / Thom Yorke - トム初の映画サウンド・トラック

トム・ヨークが映画『Suspiria』のために書き下ろした作品。
彼が映画のサウンドトラックを担当するのは初めて。(楽曲提供を除く)
日本公開は2019年1月予定。

【歌詞】

This is a waltz thinking about our bodies
What they mean for our salvation
With only the clothes that we stand up in
Just the ground on which we stand

Is the darkness ours to take?
Bathed in lightness, bathed in heat

All is well, as long as we keep spinning
Here and now, dancing behind a wall

Only the old songs and laughter we do
Are forgiven always and never been true

When I arrive here, will you come and find me?
Or in a crowd, be one of them?
Wore the wrong sign back beside her
Know tomorrow's at peace

 

【日本語訳】

これはワルツ 私たちが
身体について考え
救済を受けるための
衣服だけを身に付け踊る
ここには我々の立つ地が広がるだけ

この暗闇が私たちの得たものなの?
光を浴びて…熱をくぐり抜けて…

すべてがうまくいく
私たちが回り続けている限りは
いままさに 何かが壁の向こうで踊っている

古い歌と笑い声
それはいつだって許される
でも真実だったためしはない

私が到着したら 迎えに来てくれる?
それとも群衆に紛れて 隠れてしまうの?
おかしなサインが彼女を包み込む
明日の死を暗示して

 

【概要】

『Suspirium』は、トム・ヨークがホラー映画『Suspiria』(2019年1月公開/邦題:サスペリア)のために書き下ろした作品。本映画は1977年制作のイタリアの傑作ホラー映画のリメイク作品となっており、『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノが監督を務めることで話題になっています。

 

私はまだ原作・本作ともに観ていないので、何やら暗示的な歌詞だなあという薄っぺらい認識しか持ててないのですが、映画のストーリーを象徴していそうな言葉選びになっていますよね。

あと何気に、トムが映画のサウンド・ドラックを手掛けるのは初なんですよね。Radioheadとして楽曲を提供していたり、ジョニーがポール・トーマス・アンダーソンと名作をいくつも生み出しているので見落としがちでした。それにしても初作品がホラー映画というところもトムらしいというか、なんというか。

 

ただホラー映画苦手なんですよね。心が映画のワンシーンに囚われてしまう気がして...。でも頑張って観ようと思います...ので、歌詞の意味がわかったら解釈を追記します。

(原作知ってるよとか、いち早く観たよという方がいたらぜひ解釈をコメントいただけると嬉しいです)

 

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【歌詞解説】Just / Radiohead - やったのはお前だよ!意味深なPV

トムとジョニーがどれだけコードを組み込めるかを競い合った『The Bends』のシングル曲。
意味深なPVが当時話題となった。(記事内にPVの和訳あり)

 

【歌詞】

Can't get the stink off
He's been hanging 'round for days
Comes like a comet
Suckered you but not your friends

One day he'll get to you
And teach you how to be a holy cow

You do it to yourself, you do
And that's what really hurts
Is that you do it to yourself, just you
You and no one else
You do it to yourself
You do it to yourself

Don't get my sympathy
Hanging out the 15th floor
You've changed the locks three times
He still comes reeling through the door

One day I'll get to you
And teach you how to get to purest hell

You do it to yourself, you do
And that's what really hurts
Is that you do it to yourself, just you
You and no one else
You do it to yourself
You do it to yourself

You do it to yourself, you do
And that's what really hurts
Is that you do it to yourself, just you
You and no one else
You do it to yourself
You do it to yourself

You do it to yourself
You do it to yourself
You do it to yourself
You do it to yourself

 

【日本語訳】

きみはこの悪臭から逃れられない
あいつはこのところずっと あたりをうろついてる
あいつは彗星のようにやってきて
きみを食い物にした(ほかの誰かではなくてさ)

いつかそいつはお前(※1)のところにも来るよ
そしてお前がどれだけクソだったかを告げるんだ(※2)

お前は自分に向かってやったんだ、お前がさ
自身を傷めつけることを
そんなことをお前は自分に向かってやったんだ、お前がだよ
他の誰でもないお前がさ
お前は自分に向かってやったんだ
お前は自分に向かってやったんだ

同情なんて得られないさ
15階から身を乗り出してもさ
お前が部屋の鍵を3度も取り替えたって
あいつはドアをふらっと通り抜けて入ってくる

いつか俺はお前を捕まえる
そしてお前に教えてやる
まじりっけなしの地獄ってやつをさ

お前は自分に向かってやったんだ
お前自身を傷めつけることを
そんなことをお前は自分に向かってやったんだ、お前がだよ
他の誰でもないお前がさ
お前は自分に向かってやったんだ
お前は自分に向かってやったんだ
(※繰り返し)

お前は自分に向かってやったんだ
お前は自分に向かってやったんだ
(※繰り返し)

 

※1 前段落と同じ"You"ですが ここで主語が変わっています

※2 "holy cow"は、驚きや恐怖・不快感を表すスラング。日本語にしにくいのでこのように訳しました

 

【解説】

印象的なコード進行がイントロを飾る「The Bends」のシングル曲。トムとジョニーが、どれだけたくさんのコードを一曲に盛り込めるかを競って作られたと言われています。

 

お前は自分に向かってやったんだ!

この曲も因果応報をテーマにしています。

冒頭はとある人物(女性?)がある男性につけ狙われているシーンから始まります。

きみはこの悪臭から逃れられない
あいつはこのところずっと あたりをうろついてる

その男性はストーカーでしょうか。はたまた財産を狙っている強盗でしょうか。
いずれにせよ、その善良な市民はその男にいたぶられてしまうのです。

あいつは彗星のようにやってきて
きみを食い物にした(ほかの誰かではなくてさ)

ここまでが前談。
悲しいお話から一転、トムたちは徹底的にその悪意に対して糾弾を始めます。

いつかそいつはお前のところにも来るよ
そしてお前がどれだけクソだったかを告げるんだ

お前は自分に向かってやったんだ、お前がさ
自身を傷めつけることを
そんなことをお前は自分に向かってやったんだ、お前がだよ
他の誰でもないお前がさ

ここでもRadioheadお家芸である「追いかける側の者が、実は追われる者であった」というプロットが用いられます。「お前が誰かを破滅に追いやったのなら、誰かがお前を破滅させるのも当然だろう」という因果応報論ですね。

この表現は3rd Album「OK Compuer」の「Karma Police」や、9th Album「A Moon Shaped Pool」の「Burn the Witch」でも見られます。おそらく全アルバムを通してこの「Just」が初なのではないでしょうか。

(こうしてみるとすべてシングルカットされていますね)

 

Radiohead史上、初めてストーリー性を帯びたPV

このPVも意味深げで良いですよね。

男性が普段と変わりなく歩いていたかと思えば、突然道路に寝そべり始めます。街行く人がその理由を聞いてもなかなか答えず・・最後にみんな横になってしまいます。

その理由は明かされませんが、みなさんはどう考えましたか?

 

冒頭に、男性がバスタブに向かい合うシーンをわざわざ入れているので、ここがヒントになる気がしてますが・・どうなんでしょう。(歌詞からは罪の意識的なものだとは思うのですが・・あまりレディオヘッドはキリスト的宗教観を入れないんですよね。)

 

PV内の会話も和訳してみました。参考にどうぞ!

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A「ああなんてことを...ごめんなさい、見えなかったもので...大丈夫ですか?」

男「ああ」

A「どうしたんです、倒れたんですか?」

男「いいや、俺は元気だ。ほっといてくれないか」

A「ああ...酔っ払っているのか」

男「酔っ払ってなんていない」

A「じゃあなんでこんな道の真ん中で寝転がってるんだ?なあ、俺なんかしようか?」

A「おい... なんなんだよ。さあ、起こしてやるから」

男「触るな!」

B「なんだ、どうした?倒れてるのか?」

A「いや...そういうわけじゃないんだが...」

C「怪我してるのかい?」

男「いいや、すまないが諸君、ほっといてくれないか」

D「ちょっとおかしい人なんだよ、きっと」

男「俺は狂ってなんてない。ほっといてくれ」

A「じゃあなんで寝転がってるんだよ。なあ、どうしたのかわけを教えてくれないか?」

男「ああ...それをいうことはできない...それは正しくないことだ」

D「やっぱ狂ってやがる」

C「見て!おまわりさんよ!」

一同「おまわりさん!」

O「大丈夫かい?」

男「大丈夫だ。頼むからここで横にならせておいてくれないか」

O「そういうわけにはいかないよ、お父さん...」

男「触るんじゃない!」

A「なあ...ただわけを話してくれればいいんだ、教えてくれよ!」

男「諸君は知りたいとは思ってない。信じてくれ」

A「あんたは教える意味がないって思ってる、そうだな?...例えば、俺たちがみんな死んでしまうとか、そういうことか?それがあんたが横になってる理由なのか?」

男「違う」

A「教えてくれ!教えてくれよ、一生のお願いだから!」

男「諸君は私が横になっている理由を知りたいのだね」

A「ああ!」

男「それを望んでいるのだね?」

男「わかった、話そう。なぜ私が横になっているかを...きっと神もお赦しくださる...神は我々をお救いになるだろう...諸君には諸君が私に何を問うたのかわかっていないのだから...」

A「いいから教えろ!」

男「***********」

 

<seriph>

- Jesus, I'm sorry. I didn't see you there. Are you okay?

Yes.

- What happened, did you fall?

No I'm fine. Please leave me alone.

- You've been drinking.

I haven't been drinking.

- Why are you lying in the middle of the pavement?

- You could have broken my neck!

- Look... what's wrong? Here let me help you up.

No! Don't touch me!

-- What's the matter with him? Has he fallen?

- No... he hasn't fallen.

-- Is he hurt?

No, please, all of you, leave me alone.

-- He must be mad.

I'm not mad. Just leave me alone.

- Why are you lying down? Why won't you tell me what's wrong?

Look I can't tell you.. ...it wouldn't be right.

-- He must be mad.

-- Oh look Officer!

-- Officer!

- Are you alright?

I'm fine. Please, will you just let me lie here.

- I'm afraid I can't let you do that sir.

Don't touch me!

- Just tell me why you're lying here. Tell me!

You don't want to know, please believe me.

- You don't think there's any point right?

- What, that we're all going to die? Is that it? Is that why you're lying here?

No.

- Tell us! Tell us for Christ's sake!

You want to know why I'm lying here?

- Yes!

You really want to know?

Yes I'll tell you. I'll tell why I'm lying here... ...but God forgive me... ... and God help us all... ...because you don't know what you ask of me.

- Tell us!

 

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<あわせて読むともっと深読み>

 

【歌詞解説】The Bends / Radiohead - トムの心からの"Help!"

デビュー2作目のアルバム『The Bends』のタイトル曲。
疎外感が全面に押し出された歌詞は、
The Beatlesの『Help!』を彷彿とさせる内容となっている。

【歌詞】

Where do we go from here?
The words are coming out all weird
Where are you now
When I need you?
Alone on an airplane
Falling asleep against the window pane
My blood will thicken

I need to wash myself again
To hide all the dirt and pain
Cause I'd be scared that there's nothing underneath
But who are my real friends?
Have they all got the bends?
Am I really sinking this low?

My baby's got the bends
Oh no
We don't have any real friends
No, no, no

Just lying in the bar with my drip feed on
Talking to my girlfriend, waiting for something to happen
I wish it was the '60s, I wish I could be happy
I wish, I wish
I wish that something would happen

Where do we go from here?
The planet is a gunboat in a sea of fear
And where are you?
They brought in the CIA
The tanks and the whole marines
To blow me away
To blow me sky high

My baby's got the bends
We don't have any real friends

Just lying in the bar with my drip feed on
Talking to my girlfriend, waiting for something to happen
I wish it was the '60s, I wish I could be happy
I wish, I wish
I wish that something would happen

I wanna live, breathe
I wanna be a part of the human race
I wanna live, breathe
I wanna be a part of the human race
Race, race, race

Where do we go from here?
The words are coming out all weird
Where are you now
When I need you?

 

【日本語訳】

ぼくらはここからどこに向かうんだ?
そんな言葉がふいについて出てくる
きみはいまどこにいるんだ?
ぼくが必要としているのに
ぼくは飛行機にひとりぼっち
窓ガラスによりかかって眠りに落ちながら
ぼくの血は濁っていく

ぼくはもう一度ぼくを洗い流さなきゃ
よごれと痛みを隠すために
だって足元になにもないのが怖いんだ
でも本当の友人って誰なんだ?
みんな”bends”(※1)になってしまったのか?
ぼくはちゃんと降りていってるのか?

ああ 彼女も”bends”になってしまった
なんてこった
やっぱり本当の友人なんていないんだ
いやだ、いやだ!

ぼくはバーで点滴(※2)を入れながら
ガールフレンドと話している
そして何かが起きるのを待ってる
ああ いまが60年代だったらなあ
きっと幸せになれただろうに
ああ...ああ...
ぼくは何かが起こるのを待ってる

ぼくらはここからどこに行く?
この星は恐怖の海を漂うガンボード(※3)
なあ、きみはどこにいるんだ?
やつらはCIAに運び入れた
戦車一式と全海軍を
ぼくを吹き飛ばすために
空の彼方へ吹き飛ばすために

ああ 彼女も”bends”になってしまった
もう友人はいなくなってしまった!

ぼくはバーで点滴を入れながら
ガールフレンドと話している
そして何かが起きるのを待ってる
ああ、いまが60年代だったらなあ
きっと幸せになれただろうに
ああ、ああ
ぼくは何かが起こるのを待ってる

ぼくは生きたい、呼吸をしたい
ぼくは人類の一部になりたい
ぼくは生きたい、呼吸をしたい
ぼくは人類の一部になりたい
人類の…人類の…

ぼくらはここからどこに向かうんだ?
そんな言葉がふいについて出てくる
きみはいまどこにいるんだ?
ぼくが必要としているのに…

 

※1 “bends”:減圧症

※2 in the bar with my drip feed on:"drip feed"は点滴の意味。とあるバーに点滴をモチーフとしたカクテルがあったらしい。自身を病気と揶揄した言葉遊びだろう
※3 ガンボード:機関銃を搭載した船

 

【解説】

アルバムの表題ともなっている”bends”。その意味は「減圧症」です。

減圧症(げんあつしょう)

気圧の高い場所から低い場所に急に移動した際に体内に気泡が形成されることによって生じる症状。(中略)麻痺やけいれん,運動障害やめまい,しびれ,吐き気,言語障害などの症状が現れることがある

出典:ブリタニカ国際大百科事典 

 なぜ『Creep』で人気絶頂となった彼らが、こんな不気味な病名を曲名に、そしてアルバムのタイトルにしたのでしょうか?

 

早すぎた「成功」という名の疎外感

デビュー作『Pablo Honey』(もとい『Creep』)で、一躍トップスターに駆け上がったレディオヘッド。順風満帆に見えるその裏で、彼らは苦しみもがいていました。

『Creep』を求める世界ツアーによって、彼らの周囲は激変してしまったのです。仲良くしていた友人たちとは疎遠になり、目にするのはどこぞの誰とも知らない”ファン”たちだけ。そしてたいして気に入っていない曲を延々と演奏し続ける毎日。

この環境の変化は、彼らにとって好ましいものではありませんでした。『Pablo Honey』は半ば無理やり作らされたようなアルバムでしたし、それが世間に受け入れられることは彼らにとっては望んだものではありませんでした。本当に言いたいことは言えず、その代償にいろいろなものを差し出さなければいけませんでした。そんな状況に対する怒りを、トムは曲として書きなぐりました。それが『The Bends』なのです。

 

"The Bends"はRadioheadによる"Help!"

"bends"は前述の通り「減圧症」を指します。この症状は、気圧の高いところから低いところに移動した際に起こります。

例えば、潜水夫が海底から急に海面に上がったとき、あるいは、飛行機が機内を密閉する前に離陸して、空高く上昇してしまったときに生じます。

トムはバンドの状況を、まるで急上昇した飛行機の中にいるみたいだと考えました。以前は正しい場所にいたのに、いまは間違っている場所に来てしまったと。そして、そばにいたはずの友人たちは、成功という名の急激な上昇によって"bends"にかかって姿を消してしまったんだと。

みんな”bends”になってしまったのか?
(中略)

ああ、彼女も”bends”になってしまった
なんてこった
やっぱり本当の友人なんていないんだ
いやだ、いやだ!

この「空気の薄さ」は人間関係の比喩としても機能しています。ライブ、ファン、そして音楽業界の「空気」は薄く、友人の安心感とは程遠いものでした。彼らは成功の裏で、必死に生きている実感を求めていたのです。

冒頭の動画は1994年当時のライブ映像ですが、ご覧の通りトム・ヨークは怒りと悲しみに満ちています。まるでジョン・レノンが『Help!』で心の内をさらけ出したように、Radioheadも心の底から助けを求めていたのです。

ぼくらはここからどこに向かうんだ?
そんな言葉がふいについて出てくる
きみ(※)はいまどこにいるんだ?
ぼくが必要としているのに… 

まだ『OK Computer』も『Kid A』も世の中に存在しなかった時代です。当時の彼にとっては、先の見えない未来はただただ不安でしかなかったことでしょう。

ちなみに、この部分の歌詞の「きみ」は単にガールフレンドを指しているかもしれませんし、『Creep』で片思いをしていた女性をまだ引きずっているだけかもしれません。はたまた『Lift』でも登場した「天使的な何か」を求めているのかもしれません。

曲の最後の盛り上がりでトムは次のように叫びます。

ぼくは生きたい 呼吸をしたい
ぼくは人類の一部になりたい
人類の…人類の…

彼には心の拠り所が必要だったのです。「生きている」という実感、そして「所属している」という実感。

これはマズローの5段階説でいうところの「欠乏欲求」です。あのピラミッドの土台部分。人間が最低限求める、本当につつましい欲求です。こんなセリフ、とても成功した人間の言葉とは思えません。

 

The BeatlesといいRadioheadといい、急激な成功は強烈な圧力として人間を押しつぶすものなのでしょうか。でもその圧力のおかげで彼らは成長・変化し、その後の音楽革命を起こすことができたのも事実です。

これは皮肉なのか、はたまた運命なのか...。

何にせよ、トムがバンドを解散しなくて本当に良かった。それだけは確実に言えます。

彼らには本当に感謝しかありません。

ありがとうトム!ジョニー!コリン!エド!フィル!

 

 

<あわせて読むともっと深読み>

 

 

 

 

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【歌詞解説】Fake Plastic Trees / Radiohead - ニセモノの世界でも失われないもの。それは人間の強さ。

『The Bends』のシンプル構成のシングル曲。
オールタイムベストに選ばれる、レディオヘッドの初期の名曲。
執拗なまでに繰り返される「ニセモノ」への対抗意識を込めた普遍的なラブソング

【歌詞】

Her green plastic watering can
For a fake Chinese rubber plant
In a fake plastic earth
That she bought from a rubber man
In a town full of rubber plans
To get rid of itself

It wears her out
It wears her out
It wears her out
It wears her out

She lives with a broken man
A cracked polystyrene man
Who just crumbles and burns
He used to do surgery
For girls in the 80s
But gravity always wins

And it wears him out
It wears him out
It wears him out
It wears him out

She looks like the real thing
She tastes like the real thing
My fake plastic love
But I can't help the feeling
I could blow through the ceiling
If I just turn and run

And it wears me out
It wears me out
It wears me out
It wears me out

And if I could be who you wanted
If I could be who you wanted
All the time
All the time

 

【日本語訳】

彼女は緑色のプラスチックのじょうろで
ゴムでできた偽物の木に水をあげる
この偽物のプラスチックの土地で

そのじょうろはゴムみたいな男から
ゴムみたいな計画であふれた街で買った
街が自身を否定するような街で

それが彼女をすり減らす…
彼女をすり減らす…

彼女は希望を失った男と住んでいる
ひび割れたポリスチレンの
粉々になって燃えゆく男と

彼は医者をしていた
80年代の女の子のために
でも決して抗えないものがあるんだ

それが彼をすり減らす…
彼をすり減らす…

ああ、彼女は本物なんだ
彼女は本物の味がするんだ
ぼくの偽物のプラスチックみたいな愛
でもぼくはその愛をどうしても感じてしまう
ぼくが風に吹かれて天井を越えられたなら…
もしぼくが振り向いて、走り出せたなら…

そんな想いが
ぼくをすり減らす…
ぼくをすり減らす…

もしぼくが
君の望む姿であれたなら…
君の望む姿であれたなら…
ずっと…
ずっと…

 

【解説】

本作はとある街を舞台にした物語になっています。

ニセモノであふれた街で生きる「彼女」と「彼」。そしてそんな不条理を感じつつも愛という感情を捨てきれない「ぼく」。

彼らを通して、トムは一体何を表そうとしているのでしょうか?

本作の舞台『カナリー・ワーフ』とは?

この舞台のモチーフとなったのが、『カナリー・ワーフ』という大規模な金融都市だとされています。この都市はロンドンの東部に位置する川沿いの街で、19世紀初頭から第二次世界大戦でドイツ軍に空襲される1940年代まで、商業埠頭として栄えていました。戦後復興を果たすものの、輸送手段の近代化の波についていけず、1980年代に港としての役目を終えることとなりました。

その後、この街は再開発地区となります。当初は小規模な商業施設を誘致する計画だったのですが、1980年代後半に入ると状況は変化し始めます。再開発地区ではモダンで巨大フロアのビル建設が可能だったため、ここに目をつけた多国籍金融企業が大規模オフィスを次々に建て始めたのです。(当時のロンドン中心部では、そうした近代的な建造物の建設は承認されなかったため、多くの従業員を抱える企業たちはこぞって集まってきたのです)

そしていま、この街はイギリスの三大高層ビルが集う、イギリスきっての超高層ビル金融街として知られることとなりました。

(最も高い「ワン・カナダ・スクウェア」は、なんと235メートルという巨大さです)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/df/Canary_Wharf_Skyline_2%2C_London_UK_-_Oct_2012.jpg/1920px-Canary_Wharf_Skyline_2%2C_London_UK_-_Oct_2012.jpg

出典:カナリー・ワーフ - Wikipedia

 

失われたもの、目的を失った街

『Fake Plastic Trees』は、この変わり果ててしまった街で生きる人たちの視点で、人間性を欠いた現代社会を表現しています。

彼女は緑色のプラスチックのじょうろで
ゴムでできた偽物の木に水をあげる
この偽物のプラスチックの土地で

そのじょうろはゴムみたいな男から
ゴムみたいな計画であふれた街で買った
街が自身を否定するような街で

それが彼女をすり減らす…
彼女をすり減らす…

どう表現したらいいのでしょうか...。

みんな目が死んでいる、そんな風景しか浮かんできません。

彼女は希望を失った男と住んでいる
ひび割れたポリスチレンの
粉々になって燃えゆく男と

彼は医者をしていた
80年代の女の子のために
でも決して抗えないものがあるんだ

それが彼をすり減らす…
彼をすり減らす…

きっと「彼」も昔は熱意を燃やしていたのでしょう。

でも抗えないものの存在(例えば自分では治せない不治の病気のようなもの)を前に、希望を失ってしまったのです。

そして「彼」もこのニセモノの世界で、何も目的もなく生きるのです。

 

古き良きものが必ずしも正しいとは言いませんが、この新しい街は人間性をあまりに欠いているのです。金融街が資本操作のために組み上げたシステムは、もはや何の目的で存在するか誰もわからないのです。

ともすると「Fake Plastic Trees(ニセモノのプラスチックの木)」とは、このビル群そのものを指しているのかもしれません。

 

決して失われないもの、人間の強さ

でもこんな世界の中でも「ぼく」はある想いを感じてしまうのです。

彼女は本物なんだ
彼女は本物の味がするんだ
ぼくの偽物のプラスチックみたいな愛
でもぼくはその愛をどうしても感じてしまう

この愛は、とある女性に向けたものと考えても良いですし、人間性への回帰と考えても良いと思います。大事なのは、街がどれだけニセモノでも(ぼくがニセモノに支配されても)、この心だけは疑いようのない本物だということです。

ちょうど哲学者のニーチェが「世俗的なものの支配から脱して、大地に忠実になれ」と説いたように、トムも「生き物としての温かみを失ってはいけない!」と叫んでいるのです。

曲の盛り上がりに合わせ、彼はその愛に忠実にあろうとします。

でもあまりに世界は大きすぎて、結局は押しつぶされてしまいます。

ぼくが風に吹かれて天井を越えられたなら…
もしぼくが振り向いて、走り出せたなら…

そんな想いが
ぼくをすり減らす…
ぼくをすり減らす…

ただ、彼は諦めていません。 

もしぼくが
君の望む姿であれたなら…
君の望む姿であれたなら…
ずっと…
ずっと…

この「人としての感情を認める」という気持ちこそが人間性であり、人間を人間たらしめる強さなのです。次のアルバム『OK Computer』時代と違い、この時期の曲には「憤り」と同じくらい「希望」が込められているところが『The Bends』の魅力かなと思っています。

 

さいごに

PVでも監視された社会で息苦しく生きている人間がうまく描かれています。

我々は所詮、この社会の中で生きるしかないという諦めの感情が伝わってきます。ショッピングカートに乗るメンバーたちの姿は、自分たちが消費社会の1商品でしかないことを揶揄しているようです。

ただPVの終盤では、個人個人は確かに人間性を持っており、それが集まればきっと良い時代が来るのだという希望が展開されます。 

この曲の素晴らしさは、ただ自分しか見えていなかった『Creep』から、視点をひとつもふたつも上げ、「社会性」という普遍的なテーマを取り込んだ点にあると私は考えています。

 

本当のRadioheadはこの曲から始まったのです。

 

その意味でも、この曲はRadioheadの歴史を語る上で重要な1曲なのです。

 

 <あわせて読むともっと深読み>

【歌詞解説】Karma Police / Radiohead - 自分勝手な行いは自分に返ってくる

『OK Computer』のセカンドシングル。本国での人気も高い。
PVはトムの乗った車が一人の男性を追いかけるストーリー。
実は追いかけられている男性もトム自身を表していると言われている。

【歌詞】

Karma police
Arrest this man, he talks in maths
He buzzes like a fridge
He's like a detuned radio
Karma police, arrest this girl
Her Hitler hairdo is making me feel ill
And we have crashed her party

This is what you'll get
This is what you'll get
This is what you'll get
When you mess with us

Karma police
I've given all I can, it's not enough
I've given all I can, but we're still on the payroll

This is what you'll get
This is what you'll get
This is what you'll get
When you mess with us

For a minute there
I lost myself, I lost myself
Phew, for a minute there
I lost myself, I lost myself
For a minute there
I lost myself, I lost myself
Phew, for a minute there
I lost myself, I lost myself

 

 

【日本語訳】

カーマポリス
あの男を捕まえてくれよ
あいつは全部理詰めで話すんだ
冷蔵庫が唸るみたいにさ
まるで壊れたラジオみたいだ
カーマポリス
あの女を捕まえてくれよ
あいつのヒトラーみたいな髪型が
俺を不快にさせるんだ
だから俺たちはあいつのパーティを壊してやったんだ

これが代償さ
これが代償さ
これが俺たちにちょっかいを出した代償さ

カーマポリス
俺はできる限り捧げたよ
まだ足りないってのか?
俺はできる限り捧げたよ
なのにまだ俺たちはその名簿に載ってるのか?

これが代償さ
これが代償さ
これが俺たちにちょっかいを出した代償さ

すこしのあいだ
僕は我を忘れてた
僕は我を忘れてた

ああ、すこしのあいだ
僕は我を忘れてた
僕は我を忘れてた

【解説】

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『OK Computer』の中で、ひいては、Radioheadのキャリアの中でも最も人気の高い曲の1つです。あのOasisノエル・ギャラガーでさえこの曲は好きだと言っていたそうです(彼はツンデレなんでしょうか・・)

Granted, some of the stuff on Amnesiac is brilliant. The Bends is the bollocks. Karma Police is mega. But they don't want people like me to like their music so they can go and fuck themselves.

- たしかにAmniesiacのいくつかの曲はスゲえよ。んでもThe Bendsはクソだ。けどKarma Policeはマジパねえ。でもあいつらは俺みたいなやつに曲を好きだなんて言われたくないんだろ?マジxx野郎どもが!

引用:Oasis Interviews Archive: May 2002

 

Karma(カルマ)の警察とは?

この曲は、レディオヘッドにしては比較的わかりやすい歌詞となっています。

まず『Karma Police』というのはトムの造語です。『Karma』は仏教用語の「カルマ(善い・悪い行いに対する報い)」のことで、日本人には理解しやすい概念だと思われます。

よく母親が子供に言う「よくないことをしたら自分に返ってくるの」や、誰かの身勝手な振る舞いに対して「あんなやつは将来ろくなことにならない」と後ろ指を指したりするアレです。

トムはその考えを一歩進めました。運命に任せるのではなく、現実世界で彼らに報いを与える存在がいてくれたらなあと。それが『Karma Police(カルマ警察)』なのです。

※『Karma Police』という造語は、『OK Computer』収録当時のバンドが皮肉めいたジョークとして使っていたそうです。サイドギターエド・オブライエンがそれをタイトルにした曲を作ろうと言いだしたとのこと

 

怒りの向き先は?

まずトムは二人の人物を引き合いに出します。

カーマポリス
あの男を捕まえてくれよ
あいつは全部理詰めで話すんだ
(中略)
あの女を捕まえてくれよ
あいつのヒトラーみたいな髪型が
俺を不快にさせるんだ

「論理的な男性」と「きらびやかな女性」。ともにトムが嫌悪感を示す対象として描かれています。

「男」は数学には強いけれど人の心がわからない、きっとすぐ「はい論破」などと言ったりする人物なのでしょう。

「女」は綺麗に髪型を整えた女性。それだけなら何も不快に思うことはないので、きっと必要以上に見栄を張ったり、着飾ったりしている人物なのでしょう。

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出典:Radiohead – Karma Police Lyrics | Genius Lyrics

 

この2者に共通するのは「自分のことしか考えていない」という点です。彼らは自らを悪いと思っていないので、往々にしてこの世には、このような人物が幅を利かせていることが多いのです。

レディオヘッドが「七つの大罪」を念頭に置いていたかはわかりませんが、おそらく前者の行く末は「強欲」(資本操作)であり、後者は「虚飾」なのでしょう)

 

世の中に対する怒り、対抗する主人公

トムは彼らに対する怒りをあらわにします。

だから俺たちはあいつのパーティを壊してやったんだ

これが俺たちにちょっかいを出した代償さ

トムはカーマポリスがやってくれないので、自分で行動に移しちゃいました。普通できないですよね。優先席を譲らない中学生にも注意できないのに、私にはこんな大それたことできません。

みんなからは拍手喝采。「よくやった!」という声も聞こえてきそうです。トムもきっとカーマポリスに褒められると思いました。でも・・・

カーマポリス
俺はできる限り捧げたよ
まだ足りないってのか?
俺はできる限り捧げたよ
なのにまだ俺たちはその名簿に載ってるのか?

なんとトム自身が逮捕名簿に載っているではありませんか!

 

怒りに任せる行為。それすら業のひとつ。

なんということでしょう。
良いことをしたはずなのに?

そうなのです。主人公は良いことをしたと思っていますが、この怒りこそ「自分のことしか考えていない」行為にほかならなかったのです。やられたからやり返す。それでは負の連鎖が続くだけです。争いは終わりません。

なので、2番のサビは1番と全く同じですが、実は視点が逆転しているのです。(「男」と「女」から主人公自身へ投げかけられるセリフになっています)

これが代償さ
これが代償さ
これが俺たちにちょっかいを出した代償さ

ゾワッとしますね。

 

怒りでは何も解決しない

そこで主人公は気付くんですね。

自分勝手な行いは自分に返ってくるということを。

すこしのあいだ
僕は我を忘れてた
僕は我を忘れてた

怒りのせいで主人公は我を忘れていたのです。カーマポリスは決して自分の味方ではないのです。自分は皆と同じく、等しく裁かれる罪人の一人でしかなかったのです。

PVでもこの点がうまく表現されています。

追いかけている自分自身が最後には火で炙られて裁かれるのです。追いかけられている男性の方が、実はトム自身だったと考えるのが自然なのかもしれません。

 

では、これから主人公はどうすればいいんでしょう。この怒りを、この悲しみを誰にぶつければいいんでしょう。

あてもないまま、主人公はただ呆然と立ち尽します。

すこしのあいだ
僕は我を忘れてた
僕は我を忘れてた

それが曲の最後のリフレインなのです。

結局この感情はどこに行くこともないのです。

 

きっと彼はまたカーマポリスに頼ることになるでしょう。

自分が裁かれると分かっていても・・・。

 

 <あわせて読むともっと深読み>

追いかけている自分自身が裁かれる側だったという、同じプロットの楽曲です

jellyhead.hateblo.jp

【歌詞解説】Optimistic / Radiohead - 巨大な多国籍企業が地球を蹂躙する

『Kid A』に収録されたタムの規則的なリズムが印象的なロックナンバー。
2001年以降のライブでもたびたびセットリストに上がっている。
歌詞はカナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインの著書『ブランドなんか、いらない(原題:No Logo)』に影響を受けたと言われる。

【歌詞】

Flies are buzzing around my head
Vultures circling the dead
Picking up every last crumb
The big fish eat the little ones
The big fish eat the little ones
Not my problem give me some

You can try the best you can
You can try the best you can
The best you can is good enough
You can try the best you can
You can try the best you can
The best you can is good enough

This one's optimistic
This one went to market
This one just came out of the swamp
This one drops a payload
Fodder for the animals
Living on an animal farm

You can try the best you can
You can try the best you can
The best you can is good enough
You can try the best you can
You can try the best you can
The best you can is good enough

I'd really like to help you man
I'd really like to help you man
Nervous messed up marionette
Floating around on a prison ship

You can try the best you can
You can try the best you can
The best you can is good enough
You can try the best you can
You can try the best you can
Dinosaurs roaming the earth
Dinosaurs roaming the earth
Dinosaurs roaming the earth

 

【日本語訳】

ハエが僕の頭のまわりを飛び回っている
ハゲタカが死体のまわりを旋回している
そして最後のひとかけらまでついばんでいる
大きな魚が小さな魚を喰らう
大きな魚が小さな魚を喰らう
まあ僕には関係ないや、わけておくれよ

精一杯やるんだよ
精一杯やるんだよ
精一杯やれば、それで十分さ
(※繰り返し)

そんな誰かの楽観主義
これはマーケットに行き
そしてちょうど沼から這い出てきた
放り投げられた荷物は
家畜小屋で暮らす動物たちの飼料になる

精一杯やるんだよ
精一杯やるんだよ
精一杯やれば、それで十分さ
(※繰り返し)

ああ僕は君をそこから救い出したいんだ
僕は君をそこから救い出したいんだ
神経質に混乱したマリオネットが
海の監獄の上を飛び回っている

精一杯やるんだよ
精一杯やるんだよ
精一杯やれば、それで十分さ
(※繰り返し)

恐竜が地球を蹂躙している
恐竜が地球を蹂躙している
恐竜が地球を蹂躙している

【解説】

「Optimistic」とは「楽観的な」という意味の単語です。

この一見ポジティブなタイトルと『Kid A』における唯一のロックアンサンブルに騙されそうになりますが、この曲の本質は巨大企業による搾取への批判なのです。

「ハゲタカ」「大きな魚」そして「恐竜」

この曲の歌詞はカナダ出身のジャーナリスト、ナオミ・クラインの著書『ブランドなんか、いらない(原題:No Logo)』に影響を受けたと言われています。

『ブランドなんか、いらない』(1999年出版)

この著作では基本的に経済的なグローバリゼーションを背景としながら成長している多国籍企業での労働の実態を描き出している。

(中略)クラインの意図とは、世界を超えて広がりつつある経済システムと企業の権力について分析を加えることによって、新しい市民運動の可能性を示すことにあった。

(出典)ブランドなんか、いらない - Wikipedia

トムはこれら巨大多国籍企業による資本活動を以下のように表現しました。

ハゲタカが死体のまわりを旋回している
そして最後のひとかけらまでついばんでいる
大きな魚が小さな魚を喰らう
(中略)
恐竜が地球を蹂躙している

「ハゲタカ」「大きな魚」は弱い者を食い物にする強欲な人間、「恐竜」は巨大になりすぎた多国籍企業の暗喩です。これらの企業は、発展途上国の安価な労働力を食い物にして大きくなりました。

 

「楽観主義者」は搾取に加担している無自覚な消費者(私たち)

またクライン氏は前述の書籍においてこのような批判を展開しています。

(これらの巨大多国籍企業が)自社のブランドを計画的に形成しながら都市、音楽、スポーツ、学校、社会運動などに展開させ、自社の知名度と影響力を国際的に拡大し続けてきた。

(出典)ブランドなんか、いらない - Wikipedia

恐ろしいことに、我々は知らず知らずのうちに、彼らが搾取の上で提供しているものを「良いもの・格好いいもの」として認識してしまっているのです。

  • イケてる大人は車を乗り回すのさ(シェル石油
  • スポーツシューズを履いて汗を流すのっていいよね!(ナイキ)
  • I'm loving it!(マクドナルド)

トムはこれらのプロパガンダ何の疑いもなく信じ、そして消費してしまっている人間たちを「楽観主義」と揶揄したのです。

まあ僕には関係ないや、わけておくれよ

家畜小屋で暮らす動物

神経質に混乱したマリオネット

とても、とても痛烈な批判です。
これは彼ら(私たち)を客観的に捉えた姿なのです。

「精一杯やればいいんだよ」という幻想

最後に、この楽曲の骨子に迫ります。

トムはサビで「楽観主義者」の声をあえて代弁することで資本主義の原則である「機会の平等」という幻想を皮肉ります。

精一杯やるんだよ
精一杯やるんだよ
精一杯やれば、それで十分さ

「楽観主義者」たちは、努力はいずれ報われるものと考えています。先進国の多くの人間は、途上国の住人が経済的に浮かび上がれないのは努力が足りないからだと冷ややかに捉えている節があります。

でもこの考えは正しくありません。巨大多国籍企業が牛耳る世界ではいくら頑張っても、搾取される人間は決して報われません。社会の構造はある地点を境に決定的にねじ曲がっており、搾取される側は常に搾取され続けるようにできているのです。

そして彼らを海の上の監獄に閉じ込めているのは、他でもない「楽観主義者」である我々なのです。我々がこの消費を止めない限りは、この巨大な恐竜はずっと地球にのさばり続けるのです。

 

さいごに:変わりつつある社会

前述の書籍や『Kid A』が世に出た前後から、世論も次第に変わりつつあります。
世間に衝撃を与えた「ナイキ問題」は記憶に新しい方もいるのではないでしょうか。

ナイキのビジネスモデルは(中略)発展途上国の労働者からの「搾取」もあって、成り立っていたのだ。

1997年、ナイキが委託するインドネシアベトナムといった東南アジアの工場で、低賃金労働、劣悪な環境での長時間労働、児童労働、強制労働が発覚。この事態に米国のNGOなどがナイキの社会的責任について批判した。世界的な製品の不買運動が起こり、経済的に大きな打撃を受けた。

(出典)米ナイキが苦難の末に学んだ、CSRとは? | ここが変だよ!日本のCSR | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

ただこの事件は氷山の一角にすぎません。

問題の本質は社会の根深いところにあり、根本解決にはまだまだ時間がかかります。私たちはきちんと目を開いて世界を見なければいけません。

果たして、あなたがいま手にしているスマートフォンは、一体どこで作られたものなのでしょうか。

 

 

<あわせて読むとさらに深読み>

 

【歌詞解説】15 Step / Radiohead - 我々を振り回す最大のものは?

In Rainbows』に収録された5拍子のダンスチューン。
本アルバムはグラミー賞で、最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバム賞を受賞した。

【歌詞】

How come I end up where I started?
How come I end up where I went wrong?
Won't take my eyes off the ball again
You reel me out then you cut the string
How come I end up where I started?
How come I end up where I went wrong?
I won't take my eyes off the ball again
First you reel me out and then you cut the string

You used to be alright, what happened?
Did the cat get your tongue?
Did your string come undone?
One by one, one by one
It comes to us all, it's as soft as your pillow

You used to be alright, what happened?
Et cetera, et cetera
Fads for whatever (Yeah!)
Fifteen steps then a sheer drop

How come I end up where I started?
How come I end up where I went wrong?
Won't take my eyes off the ball again
You reel me out then you cut the string

 

【日本語訳】

どうして始まった場所で終わるの?
どうして最後に道を踏み外して終わる?
今度は絶対に目を離さないよ
あんたは俺を引き上げて、糸を切るんだ

どうして始まった場所で終わるんだ?
どうして最後に道を踏み外して終わる?
今度は絶対に目を離さない
あんたはまず俺を引き上げてから、糸を切るんだ

君は問題なかったのに、何があったの?
どうして黙っているんだい?
君の糸はほどけてしまったの?
1本ずつ、1本ずつ
それは俺たち全員にふりかかる
枕と同じくらいの柔らかさで

君は問題なかったのに、何があったの?
そのほかに、そのほかに…
色んなのものに一時的に熱狂して
15段のぼった先には、切り立った崖

どうして始まりの場所で終わるんだ?
どうして最後に道を踏み外して終わる?
今度は絶対に目を離さない
だってあんたは俺を引き上げて、糸を切るんだ


<主要単語>
・How Come:なにが原因で、どうして(≒Why)
・Cat got your tongue?:「どうして黙っているの?」という慣用句(主に子供に使う)
・One by one:1つずつ
・Fad:一時的な熱狂

 

【解説】

In Rainbows』の1曲目を飾る変拍子のダンスチューン。このアルバムは2007年にバンド自身が、リスナーが価格を自由に決められる「It's up to you(あなた次第)」形式でインターネットリリースし、当時の音楽業界を震撼させました。(後にCD版でもリリースされ、UK・USともに1位を記録)

※このリリースの背景には、当時のレーベルEMIとの契約が影響していると言われています。前作『Hail to the Thief』で契約満了となった彼らは、過去の作品がレーベル側による一方的な扱いを受けていることに憤りを感じており、バンドというものが自らの作品をコントロールできる世界を望んでいたのです。

(参考:レディオヘッド、トムが異例の反論メッセージを公式サイトにUP

 

逆らうことができない憤り 

この曲のテーマは「振り回される者の憤り」です。

どうして始まった場所で終わるんだ?
どうして最後に道を踏み外して終わる?

(中略)

君は俺を引き上げて、糸を切るんだ

 

意図しない始まりと終わりを迎える、
魚のように引き上げられ、そしてまた海に返される、
そして自分はそれに逆らうことはできない、
(じっと注意を払うしかできない)
そんな理不尽な情景です。

彼らは「自分ではどうしようもない現象」をこの楽曲で表現しました。
(前述のEMIもその「振り回す者」の一つですね)

 

歌詞に散りばめられた暗喩

彼らは何に怒っているのでしょうか?
曲中では、それが何かはあえて明示していません。

でも実は様々な暗喩がちりばめられています。

君は問題なかったのに、何があったの?
どうして黙っているんだい?
君の糸はほどけてしまったの?
1本ずつ、1本ずつ

「糸」がほどけて、黙ってしまう人。

それは俺たち全員にふりかかる
枕と同じくらいの柔かさで

「全員に降りかかる」もの。

「枕のような柔らかさ」で訪れるもの。

15段のぼった先には、切り立った崖

そして「15 Step」とその先の崖(=絞首刑台の比喩)

これらはすべて「死」の暗喩なのです。

 

我々を振り回す最大のもの。それは・・・

この曲は、我々は何者かに振り回された結果「死」に追い込まれてしまう・・・とうたっているのでしょうか?

いえ、それではこの曲の半分しか表現できていません。

曲の始まりをもう一度見てみましょう。

どうして始まった場所で終わるの?
どうして最後に道を踏み外して終わる?
今度は絶対に目を離さないよ
あんたは俺を引き上げて、糸を切るんだ

どうでしょうか。「道を踏み外して終わる」と「糸を切る」はまさしく死の連想ですが、一方の「始まった場所」や「引き上げる」はどのような意味を持つでしょうか?
それに「今度は」という表現も。

歌詞に注釈を入れるとこのようになるでしょう。

あんたは(この世に)俺を引き上げて
糸を切る(また死の国に送り返す)んだ

おそらくこの曲には、輪廻転生的な死生観がベースとして存在するのでしょう。

彼らが描くこの世界では、何度でもやり直しを強要され、そして何度でも苦しみを与えられる。そうです、我々を振り回す最大のものは「生命」や「社会」そのものだったのです。

 

「この世に生まれ落ちてから、この世界に振り回されっぱなしだよ、チクショウ」

 

そんな不条理な世の中に対する憤りなのです。

 

だからどうしようという答えは、いつものように提示されません。
ただ、この事実を意識して生きるのと、のほほんと生きるのでは世界はまるで変わって見えるはずです。

彼らにとってのこの世界はまさに変拍子であり、
それはプラグを抜かれた僕らから見える景色でもあるのです。