深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞解説】Burn The Witch / Radiohead - 寛容なき世界へようこそ

MVは英国のクリス・ホープウェル監督による。
同氏は2003年に「There There」のビデオを手掛け、MTV Video Music Awardsで『Best Art Direction in a Video』(最優秀アートディレクション賞)を受賞している。

 

【歌詞】

Stay in the shadows
Cheer at the gallows
This is a round up

This is a low flying panic attack
Sing a song on the jukebox that goes 

Burn the witch
Burn the witch
We know where you live

Red crosses on wooden doors
And if you float you burn
Loose talk around tables
Abandon all reason
Avoid all eye contact
Do not react
Shoot the messengers 

This is a low flying panic attack
Sing the song of sixpence that goes

Burn the witch
Burn the witch
We know where you live
We know where you live

 (引用元:Google Play Music

 

【日本語訳】

影にとどまり
絞首台に歓声を上げろ

さあ狩り集めだ
これは『低空飛行のパニック発作』だ(※)
(※レーダーに映らない攻撃+突発的な発作をかけた言葉遊び)
魔女を燃やすジュークボックスの歌を歌おう

魔女を燃やせ
魔女を燃やせ
俺たちはお前たちがどこにいるかわかっているぞ

木製のドアに赤い十字架
もしお前が浮かんだら、お前は燃える
テーブルを囲んだとりとめのない会話
理由なんて考えるな
目を合わせるな
反応するな
使者(※)は撃ち殺せ
(※ここでは相対する集団から伝言を持って来た人のこと)

これは『低空飛行のパニック発作』だ
魔女を燃やす6ペンスの唄(※)を歌おう
(※『Sing the song of sixpence(6ペンスの唄)』は、英語圏の人なら誰でも知っている曲のタイトル。童話「マザー・グース」の一編。大衆的な歌の象徴)

魔女を燃やせ
魔女を燃やせ
俺たちはお前たちがどこにいるかわかっているぞ
俺たちはお前たちがどこにいるかわかっているぞ 

 

【解説】

歌詞では、大衆が魔女を攻撃する姿を描いています。
自分は安全な場所(影の中)にいながら、魔女狩りを賛美してしまっている世界です。

みんな流行りの曲や、子供の時から聞かされている曲を歌っています。
赤い十字架は、次の狩りの対象です。
みんな深く考えようとしません。
魔女が何を言っても聞きません。
もし魔女が交渉に来ても相手にしてはいけません。
だって相手は『魔女』なのだから!

この曲を読み解くヒントは3つ。

  1. 歌詞とMVで表現される『無自覚な排他性』
  2. 曲の終盤で展開するストリングスの『不協和音』
  3. 謎のポストカード

これらを順番に見ていきましょう。

 

1:現代社会の『無自覚な排他性』を風刺

攻撃的な歌詞は一見、人々の悪意を焚きつけるプロパガンダにも見えますが、もちろんそんなわけはなく、全てはトム・ヨークお得意の皮肉戦法です。

歌詞に描かれる人々は、魔女という『共通の敵』を作ることで自分たちの立場をを守ろうとしています。本人たちはそれを正しいことだと信じ込んでいます。疑問なんて持ちませんし、それが一種の団結感にもつながっています。(♪ さあ、ジュークボックスの歌を歌おう

ちなみに、MVを制作したメンバーが「ヨーロッパの難民危機に言及している」と明かしています。

◆ MVのストーリー

一人の調査官が、とある村を訪ねる

調査官が到着する前、村の長らしき人物は村人を集めて何かを申し合わせている

村のあちらこちらを案内されながら、その閉鎖的な文化を目の当たりにする

最後に調査官は『ウィッカーマン(※)へと案内され、火をつけられ燃やされてしまう 
※巨大な人型の檻の中に犠牲に捧げる家畜や人間を閉じ込めたまま焼き殺す人型の構造物(参照:Wikipedia

なぜMVのテーマが「難民危機」になったのでしょうか?
それはこの曲が、自分の仲間ではないものに対する『排他性』を表しているからです。

バンドが世の中に投げかけたかったのは、不寛容さはあらゆる場面に存在しているのに、多くの人間がそれに気づかずに加担してしまっているという事実です。

この曲がリリースされた2016年は、ちょうど欧州の難民受け入れが大きな社会問題になった時期でした。彼らが住む英国でも激しい賛否両論が飛び交っていました。自身の雇用が脅かされると危惧した欧州の人々の多くは難民を排除しようと躍起になりました。国家間でも容認派と拒否派が真っ二つに割れ、翌年の英国のEU離脱という歴史的事件に発展する事態となりました。

(この曲自体は2005年 〜『Hail to the Thief』リリース前後〜 には完成されていたと言われていますが、時代が変わっても『魔女狩り』が行われている事実に彼らは憂いたでしょう。)

また、ここ日本も例外ではありません。最近「日本人が寛容でなくなった」という声がちらほら聞かれます。これも『魔女狩り』の一種なのでしょう。

ブログやツイートやテレビCMのアラを探し、一度標的を見つけると徹底的に叩く人々がいます。また吊るし上げられた人を見て「あの人は何か悪いことをしたらしい」と、後続の人たちも非難し始めます。本当の理由なんて知りもしないのに。

彼らはそれが正義だと信じているのです。そして『魔女』に仕立て上げられた人は、何を言っても聞き入れられません。その人にはもう、まっとうな権利はないのです。だって『魔女』なのだから。 

 

2:『不協和音』で表現したかったものとは? 

そもそもこの風潮を作り上げているのは誰なのでしょうか?
一部の心ない人間たちなのでしょうか?
メディアの影響なのでしょうか?
はたまた政府が煽動しているのでしょうか? 

彼らがアンサンブルで表現しているのは、社会は一見秩序に沿って動いているようにみえるが、実のところとっくにガタがきていて誰も止めることができなくなっている、というなんとも厭世的な結論です。

軽快にスタートしたストリングスの流れはあっちこっちに寄り道をしながら、最後はめちゃくちゃに絡み合って、不協和音がピークに達した最中、突然終わります。

いまの世の中は『不協和音』状態なのです。まるで万人が万人に対する闘争を行っているような状態なのです。誰が始めたわけでもなく、根元的な「悪」がいるわけでもないのです。この大きな流れに抗うことは非常に困難です。 

 

3:ファンに届いた謎のポストカード

もうひとつ、MVには『追いかけているものが、実は追いかけられているものであった』というプロットが隠されています。

(Karma Policeでトム・ヨークが焼かれてしまうストーリーにも同じプロットが見られます)

さっきまで(国に守られた)安全なポジションにいて、監視する側であったはずの調査官が、村人から監視され焼かれてしまうように、狩る側と狩られる側の境界は非常に曖昧なのです。きっと決まったレールから一歩足を踏み外しただけで攻撃の対象になってしまうのでしょう。 

アルバムのリリース直前に、バンドが謎のポストカードをファンに送りつけています。そこには歌詞の引用「Sing the song of sixpence that goes Burn The Witch. We know where you live(魔女を燃やす6ペンスの唄を歌おう。俺たちはお前たちがどこにいるかわかっているぞ)」 と書かれていました。

彼らはこのプロモーションを通して、一般市民が「狩る側」にも「狩られる側」にも成り得るのだぞ、というメッセージを茶目っ気たっぷりに伝えたかったのでしょう。

 

まとめ

我々は知らず知らずのうちに『魔女狩り』に加担してしまっているかもしれません。決して自覚することはできないのです。
だからこそ、そういった可能性があると認識して生活しなければいけない。さもないと、あなたがいつ『魔女』として狩られる側になるかわからない。

彼らはこの曲を通して、現代社会に生きる我々に警鐘を鳴らしているのです。

 

 <参考>

マザーグースより『6ペンスの唄』