深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞解説】2 + 2 = 5 (The Lukewarm.) / Radiohead - だって僕はやってない。まるで子供の言い訳のよう

【歌詞】

2+2=5 (The Lukewarm.)

("We're on.")
("That's a nice way to start, Johnny.")

Are you such a dreamer,
To put the world to rights?
I'll stay home forever,
Where two and two always makes a five

I'll lay down the tracks,
Sandbag and hide,
January has April showers,
And two and two always makes a five

It's the Devil's way now,
There is no way out,
You can scream and you can shout,
It is too late now

Because
You have not been paying attention
Paying attention
Paying attention
Paying attention
(*repeat x 4)

I try to sing along
But the music's all wrong
Cause I'm not, cause I'm not
I swat em like flies but
Like flies the buggers
Keep coming back.
But I'm not!
Oh, hail to the thief
Oh, hail to the thief
But I'm not, but I'm not
But I'm not, but I'm not
Don't question my authority or put me in a box
Cause I'm not, cause I'm not
Oh, go and tell the king, that the sky is falling in
But it's not, but it's not, but it's not
Maybe not, maybe not

【日本語訳】

君はまだそんな夢を見ているの?
世界を正しく導けるって?
ぼくはこの家に留まるよ
この2+2=5になる場所で

ぼくは道路を敷いて
土嚢を積み上げ、そして隠れる
真冬に春雨が降っている
ここではいつだって2+2=5なんだ

ああ、もう悪魔の道にいる
もう逃げ場なんてないんだ
君は悲鳴を上げることも叫ぶこともできる
...けどもう手遅れなんだ...

だって!
君が注意を払っていなかったから!
注意を払っていなかったから!
注意を払っていなかったから!
注意を払っていなかったから!
(※繰り返し)

ああ、ぼくはきちんと歌おうとするんだけど
歌が全部間違ってて...
...だって僕は間違ってない!僕は間違ってない!

ぼくは彼らをハエみたいに叩くんだけど、
ハエみたいに嫌なやつは何度も戻ってきて...
でも僕は嫌なやつなんかじゃない!

ああ、泥棒万歳!
ああ、泥棒万歳!
でも僕は泥棒じゃない!僕はそうじゃない!

僕の権利を疑わないで!
僕を箱に閉じこめないで!
僕は違うんだから!僕は違うんだから!

ああ、王様のところに行って言いなよ、いまにも空が落ちてくるよって!

でもそんなこと起きてない!
でもそんなこと起きてない!

起きてない!
...起きてないよね..?

 

【解説】

ブッシュ大統領の疑惑の当選、イラク戦争の泥沼化。
テロの脅威が世界に蔓延し、そして罪もない人々が命を落としていきます。

この曲が冒頭を飾る『Hail to the Thief』というアルバムは、そんな時代に作られました。トムは、まるでネジが外れて狂い始めているような世界をありのままに、衝動のままに描いたのです。

※プチ情報:このアルバムはリリース直前まで『The Gloaming』(夕暮れ)というタイトルになる予定でしたが、時代に合わせて『Hail to the Thief』(アメリカ大統領選の揶揄)に変更されることとなりました。トムは「こんなタイトルにしたら、米国選挙の論争だけを指すと誤解されるかも」と悩んだと言われています

なぜ2+2が5になるの?4じゃないの?

最初に思いますよね。

この『2+2=5』というフレーズですが、これはジョージ・オーウェルの小説『1984年』からの引用となっています。この言葉は「二重思考」を表すもので、一見正しくないものも、思い込むと正しくなるというメタファーとして使われます。

二重思考は(中略)相反し合う二つの意見を同時に持ち、それが矛盾し合うのを承知しながら双方ともに信奉すること

作中の例でいえば、舞台となっている全体主義国家では民主主義などは存立しえない、という事実を信じながら、なおかつ、国家を支配する「党」が民主主義の擁護者である、というプロパガンダをも同時に信じることを指す。

Wikipediaより)

この曲は「2つの相反する思考を持ち合わせている人々」を表現したものなのです。

 

誰が戦争を始めたのか?

イラク戦争が泥沼化し、テロの恐怖が世界を覆いました。

こんな世界にしたのはブッシュ大統領のせいだ!と、反戦派の人々は一様に叫びます。米国内も反戦のムードが高まりました。

でもおかしいですよね。彼を当選させたのは他でもない米国民自身なのです。
(今となっては選挙に不正があったかどうかは定かではありません)

9.11から世界はおかしくなってしまいました。いや、もっと前からおかしかったのかもしれません。人々は憎しみを抱き、敵国をたたきつぶせと叫びながら、いや、やっぱりやめよう戦争は良くない、と立ち止まり、またテロが起きればたたきつぶせと叫び...。

トムはこう考えました。戦争は大統領が始めたのではなく、これは市民全員が何かしら加担してしまった結果なのだと。トムは声を荒げ「我々が注意を払っていなかったから!(この最悪な事態は起きてしまったんだ!)」と歌います。

これらが起こりうる世の中だとわかっていたのに、どこかでそんなことは起こらないと思い込んでいた慢心。 それが我々の至らなさであり、世界を闇へと突き落としてしまった本質なのだと。

 

「でも、僕は違う!」。それは子供の言い訳のよう。

2001年9月11日。世界が壊れ始めた日以降、我々はどう考えていたでしょうか。
どこか浮世立っていて、この世の出来事ではないように感じていたのではないでしょうか。特に日本人である我々からすると、中東のいざこざや太平洋をまたいだ国の政治なんて「私とは関係ない」と感じていたのではないでしょうか。

トムも同じように歌います「でも、僕は違う!」と。
曲中に何度も何度も叫びます。まるで耳を塞いで責任から逃れようとする子供のように。

この主人公は、私たちが知らず知らずやっていたように、世の中の全てを人のせいにして逃げようとしているのです。間違っていることと正しいこと、それらをどちらも見て見ぬふりをしながら、自分だけは干渉されない場所に逃げ込もうと。

それがトムから見た、市民の姿なのです。

『ねえ。見て見ぬ振りはもうやめて、
ちゃんと注意を払って向き合おうよ。』

それがこの曲に込められたメッセージなのです。

余談

曲の最後に、「It's not」(決めつけ)が「Maybe not」(ちょっとした疑問が入る)に変わるところに、主人公の理性が戻りつつあることを感じるのは私だけでしょうか?