深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞解説】Creep / Radiohead - 30年を経てようやくたどり着いた憧憬

Radioheadの最初のヒットソング。ロック好きはNo1に名を挙げ、Radioheadファンは最悪の1曲に挙げる。
プロデューサーへのお披露目で「スコット・ウォーカーの曲」と冗談交じりに紹介したら、本気にされてしまったというエピソードも。トムのシンプルな恋心を歌に載せた、極めて珍しい1曲。

スコット・ウォーカー:19世紀中盤の米国歌手「Q誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」第39位。

【歌詞】

When you were here before
Couldn't look you in the eye
You're just like an angel
Your skin makes me cry

You float like a feather
In a beautiful world
And I wish I was special
You're so fuckin' special

But I'm a creep, I'm a weirdo.
What the hell am I doing here?
I don't belong here.

I don't care if it hurts
I want to have control
I want a perfect body
I want a perfect soul

I want you to notice
When I'm not around
You're so fuckin' special
I wish I was special

But I'm a creep, I'm a weirdo.
What the hell am I doing here?
I don't belong here.

She's running out again,
She's running out
She's run run run run

Whatever makes you happy
Whatever you want
You're so fuckin' special
I wish I was special

But I'm a creep, I'm a weirdo,
What the hell am I doing here?
I don't belong here.
I don't belong here.

 

 

【日本語訳】

君がそばにいても

ぼくは目を合わせられなかった
君は天使みたいなんだ
君の肌を見てると(美しすぎて)涙が出てくるんだ

君は羽みたいに美しい世界を舞う
ああ、ぼくが特別だったらなあ・・
君は・・本当に特別なんだ・・

でもぼくは嫌なやつだ
ぼくはおかしなやつだから
ぼくは一体どうしたらいいんだろう?
ぼくはここにいるべきじゃない・・

ぼくはこの心が傷ついても構わない
ぼくはそれを制御したいんだ
ぼくは完璧な体が欲しい
ぼくは完璧な魂が欲しい

君に気付いて欲しいんだ
ぼくがそばにいないときも
君が本当に特別なんだって
ぼくもそうありたいんだって

でもぼくは嫌なやつだ
ぼくはおかしなやつだから
ねえ、ぼくは一体どうしたらいいんだろう?
ぼくはここにいるべきじゃない・・

彼女はまたどこかに行ってしまう
ああ、彼女は行ってしまう・・行って、行って、行って・・!

君を幸せにするものなら何でも・・
君が望むものなら何でも・・
君は本当に特別なんだ・・
ぼくもそうありたいんだ・・

でもぼくは嫌なやつだ
ぼくはおかしなやつだから
ぼくは一体どうしたらいいんだろう?
ぼくはここにいるべきじゃない・・
ぼくはここにいるべきじゃない・・

 

【解説】 

優しいメロディのラブソング。そしてサビをぶち壊すジョニーのギター。本日はこの曲について見ていきます。
(なおコーヒーに入れる粉ミルク「Creap」(森永乳業)とは全く関係ありません)

インテリ男子の純粋な恋心

「Creep」は「嫌なやつ」という意味の単語です。場にへりくだったり、相手に合わせようとする、ちょうど「ロード・オブ・ザ・リング」の「ゴラム」みたいなイメージでしょうか。

トムは劣等感の塊のような幼少期を送っていました。生まれながら閉じていた左目に対する度重なる手術の後遺症で、常に片目を半分つむったままだったことも影響したのでしょう。そんな容姿と色白で細い彼は「サンショウウオ」と揶揄されたりもしました。

気難しく見た目もパッとしない、そんなインテリが高嶺の花に恋をしたら・・・。

でもぼくは嫌なやつだ
ぼくはおかしなやつだから
ぼくは一体どうしたらいいんだろう?

 この美しく、それでいて聴いているこちらが泣きたくなるくらいネガティブな歌詞は、一人の多感な男の子の純粋な恋心なのです。

 

当時のUKキッズの反応 「上流階級の奴も愛では悩むんだね!」

この曲は、ポップソングとしてとても素晴らしい曲です。
でもあえて言うと、別にRadioheadが作らなくても良かった「ただのラブソング」です。

もちろんこんなネガティブなラブソングなんて当時は存在しなかったので、英国でも少しばかり評判を呼びました。「あはは、上流階級の子も愛では悩むんだね!」と。リリース年の英国チャートは75位でした。当時のロックは労働階級のものでした。

純粋なラブソングなんて、Radioheadが手を出してはいけない領域だったのです。そんなのは西野カナに任せておけば良かったのです。そして、その後のアメリカでの期待しない大ヒット、逆輸入による本国ブームはご存知の通り。その後10年間、「Kid A」が誕生する2000年まで、彼らはこの曲に苦しめられることになります。

運命的なUKインテリラブソングのバトン渡し

Radioheadが「Kid A」で自らの解体に取り組んでいる頃、2000年3月UKロックシーンに運命的な事件が起こります。

Coldplayが「Shiver」「Yellow」という名曲を次々と発表したのです。突然シーンに現れた彼らは、まさに「上流階級のラブソング」の歌い手でした。「Creepを歌え!」と言っていたファン(?)たちは、この新生バンドに飛びつきました。そして何より、彼らはRadioheadが望まなかった「厚遇」を喜んで受け入れてくれました。20年近く経つ今でも、彼らはそのアイコンをきちんと守り通しています。

この事件がなければ「Kid A」も違った評価をされていたかもしれません。
本当にありがとうクリス・マーティン

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30年の時を経て昇華された楽曲

さらに時を経た2010年代、Radioheadは再びこの曲を演奏し始めました。一部では、嬉しいファンサービスと捉えていますが、私はこの30年で、トムの心境に変化があったのだと考えています。

「Kid A」以降、自分に自信を取り戻した彼は、この曲の「You」を違う存在へと置き換えて歌っているのではと思うのです。それは「Lift」に登場する天使であったり、「Reckoner」の創造主であったりする、絶対的な存在に対する憧憬であり、この世界に囚われた小さな人間による懇願なのです。

昨今のライブ映像を見ると、確かに遠くの、それでいて確実な存在を見据えているように見えてくるのです。

 

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彼女はまたどこかに行ってしまう
ああ、彼女は行ってしまう・・行って、行って、行って・・!

君を幸せにするものなら何でも・・
君が望むものなら何でも・・
君は本当に特別なんだ・・
ぼくもそうありたいんだ・・

 

この曲は30年の時を経て、ようやくあるべき場所にたどり着いたのです。

まさにEverything in Its Right Placeといったところでしょうか。

お後がよろしいようで・・。

 

 

 

こちらもよければお読みください。

jellyhead.hateblo.jp

 

参考リンク

苦悩に染められたレディオヘッドの「Creep」は、ファンにも彼らにとってもスペシャルな1曲に - TAP the POP|ミュージックソムリエ|TAP the POP