深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞解説】Paranoid Android / Radiohead - アンドロイドは救われるか?

彼らの歴史を前期と後期に分けるなら、
間違いなくバンド前期の集大成と言える1曲。『OK Computer』に収録。

【日本語訳】

なあ、この音を止めてくれないか?
頭の中で小鳥の胎児がさえずっている
僕はこの音から逃れて休まりたいんだ...

なあ、この音はなんだ?
(僕は偏執症かもしれないけど、アンドロイドじゃない)
なあ、この音はなんだ?
(僕は偏執症かもしれないけど、アンドロイドじゃない)

もし僕が王様だったら
あんたを真っ先に壁の前に立たせるよ(※=銃殺刑にしてやるよ)
その全く身のない主張と一緒にさ

なあ、この音はなんだ?
(僕は偏執症かもしれないけど、アンドロイドじゃない)
なあ、この音はなんだ?
(僕は偏執症かもしれないけど、アンドロイドじゃない)

野心があんたを醜くしてる
感情むき出しのグッチを身につけた子豚みたいだ

なあ、覚えていないのか...?
なあ、覚えていないのか...?
何故僕の名前を覚えていない...?

おい、あいつの首をちょん切れ!(※)
おい、あいつの首をちょん切れ!
何故僕の名前を覚えていない...?
あいつが忘れるはずがないのに...!
(※『不思議の国のアリス』でハートの女王がアリスに向かって吐くセリフの引用)

雨がふって...
雨がふって...
ああ...僕の上に雨がふってくる
とんでもない高さから
とんでもない高さから...高さから

雨がふって...
雨がふって...
ああ...俺の上に雨がふってくる
とんでもない高さから
とんでもない高さから...高さから

以上になります     (雨がふって)
あなたは去っていくんですね
豚の革がパチパチ鳴る音  (雨がふって)
ゴミと金切り声      (ああ雨が...)
エリートたちの情報交換網 (僕の上に...)
恐怖、吐き気 (とんでもない高さから...)
恐怖、吐き気 (とんでもない高さから...)

神は神の子を愛する
神は神の子を愛する

・・・アハハハハッ!!

 (※アンドロイド:人がつくった人間のようなロボット)

【歌詞】

Please, could you stop the noise?
I'm trying to get some rest
From all the unborn chicken voices in my head

What's that?
(I may be paranoid, but not an android)
What's that?
(I may be paranoid, but not an android)

When I am king
You will be first against the wall
With your opinion which is of no consequence at all

What's that?
(I may be paranoid, but, no android)
What's that?
(I may be paranoid, but, no android)

Ambition makes you look pretty ugly
Kicking, squealing Gucci little piggy
You don't remember
You don't remember
Why don't you remember my name?
Off with his head, man
Off with his head, man
Why don't you remember my name?
I guess he does

Rain down, rain down
Come on, rain down on me
From a great height
From a great height, height
Rain down, rain down
Come on, rain down on me
From a great height
From a great height, height
That's it, sir, you're leaving (Rain down)
The crackle of pigskin (Rain down)
The dust and the screaming (Come on, rain down)
The yuppies networking (On me)
The panic, the vomit (From a great height)
The panic, the vomit (From a great height)
God loves his children
God loves his children, yeah!

 

【解説】 

Radiohead史上、最高のギターロックとも称される1曲。

このブログを見ている方にはお馴染みかもしれませんが、この曲も『OK Computer』のテーマである「生きにくい世の中に対する鬱屈」を表現する楽曲となっています。

いやむしろこの曲がアルバム全体を牽引している節すらあります。

彼らの批判対象は、無自覚な政治家や資本経済、形骸化した文化、易きに流れる人々などですが、この『Paranoid Android』という楽曲はそれに輪をかけて「究極の孤独感・疎外感」を表現してしまいます。それでは読み解いていきましょう。

絶えず鳴り響く不快音

まず冒頭から、主人公はあるノイズに悩まされています。「小鳥の胎児がさえずり」とも表現されているこの音ですが、これは偏執症の人によく見られる「幻聴」として捉えるのが良いでしょう。(たまに街中でも1人で会話している人を見かけますよね)

もちろんこれは一種のメタファーです。主人公はトムですから、人一倍”耳が良い”んですよね。このブログを見にきているみなさんの中にも同じ状況の方がいるでしょう。主人公は外から聞こえる音(不合理な社会の軋む音)と、内から聞こえる音(その世界に対する苛立ち)に常に心を擦り減らしているわけですね。

(ただトムは『OK Computer』の制作時、一時的に精神に支障をきたしていたので、本当の「幻聴」として受け取ってしまっても良いのかもしれません)

そして次のフレーズを、Mac音声合成ソフトが読み上げます

I may be paranoid, but not an android

僕は偏執症かもしれないけど、アンドロイドじゃない

これをあえてロボットに読ませるあたり、このバンドは本当にセンスが良いですよね。「僕はアンドロイドじゃない」と言っておきながら、実は本人も薄々気づいているんですよね。自分がただの偏執症じゃないということを。ただ「アンドロイド」の伏線回収は歌の終盤になってからなので、ここでは軽く流して次に進みましょう。

 

社会は間違っている。正しいのは僕の方だろ?

続く歌詞は、世の中に目を向けた時の主人公の感情です。

もし僕が王様だったら
あんたを真っ先に壁の前に立たせるよ(※=銃殺刑にしてやるよ)
その全く身のない主張と一緒にさ

(中略)

野心があんたを醜くしてる
感情むき出しのグッチを身につけた子豚みたいだ

「間違った奴らが世界を牛耳っている。そんな醜い社会が正しいはずがないだろう?」

そんな鬱屈とした思想が見え隠れします。

そしてここで一変、曲の暴走とも言える展開とともに、主人公の感情は爆発します。
自分(アンドロイド)を作ったはずの「ニンゲン」が、自分のことを覚えていないと知ってしまったのです。

なあ、覚えていないのか...?
何故僕の名前を覚えていない...?

おい、あいつの首をちょん切れ!
あいつが忘れるはずがないのに...!

通りで主人公が生きにくさを感じていたはずです。自分はこの社会の構成員として認識されていなかったのです。この社会は「ニンゲン」の「ニンゲン」による「ニンゲン」のためのものだったです。

真実を知った主人公が自暴自棄に陥る瞬間を、トムとジョニーとエドの3本のギターが滅茶苦茶に表現します。悲しみ、怒り、恐怖、それらの感情が一気に押し寄せます。その願い(?)が叶ったのか、曲は静かな展開を迎えます。

 

神が雨を降らす。神の子を救うために。

雨がふって...
雨がふって...
ああ...僕の上に雨がふってくる
とんでもない高さから
とんでもない高さから...高さから

この「雨」は一体何でしょうか?

『ショーシャンクの空』よろしく「救いの雨」なのでしょうか?
はたまた主人公の「涙」のメタファーでしょうか?

ここで歌詞の末尾を先に見てみましょう。

神は神の子を愛する

どうやら、この雨の背景には「神」の存在がありそうです。おそらくこの雨は『ノアの方舟』の洪水を引き起こしたアレなのでしょう。「神」は世の堕落を悲しみ、再び世界を洗い流そうとしているのです。

そう捉えると、次の歌詞がスムーズにつながってきます。

以上になります
あなたは去っていくんですね
豚の革がパチパチ鳴る音
ゴミと金切り声
...

主人公はいま「神」と対峙し、(一方的ではありますが)正直に語りかけています。なんせ自分が壊したいと思っていた世界を、いともたやすく浄化してくれる存在なのですから。世の中の状況を報告し、この雨を最後に神が去っていくのを見送っています。「豚の皮...」以降は、崩壊に向かっている世界を描写したものです。

 

救いのリストにすら入っていないと理解した、圧倒的な「疎外感」

そして曲は最後の一節を残し、クライマックスを迎えます。

神は神の子を愛する
神は神の子を愛する

ここで主人公はハッとします。
世界が生まれ変わろうとしている最中、主人公は気付いてしまったんです。

「神」が救うのは「神の子(ニンゲン)」だけ。じゃあ「ニンゲン」に造られた「僕(アンドロイド)」はどうなるんだ...?

そうなんです。主人公にははじめから救いなんてなかったんです。

「ニンゲン」にも「神」にも見放されたと気付いた主人公は再び狂い始めます。ギターが歪み、声にもならない叫びが響き渡り...それらがピークに達した瞬間、曲は終わります。

 

「アンドロイド」は何のメタファーなのか?

この壮大なロック・シンフォニーでは、「ニンゲン」「神」「アンドロイド」という三者が壮大なメタファーとして機能しています。トムはアンドロイドの視点を借りることで、究極的な疎外感を描いてみせました。私たちはこれを他人事だと笑えるでしょうか?

トムはこの曲で、「アンドロイド」と私たちは本質的には何も変わらないのだと伝えているのです。政治家が政治のために、資本家が資本のために社会を作り替えるとき、その輪の中に入っていない人々は存在すらしていないように扱われてしまうのです。

彼らはジョン・レノンのように「だから立ち上がろう」とは言いません。ただただ沸いてくる、言い知れぬ怒りをそのまま楽曲に込めたのです。

 

私たちは一体、どうするべきなのでしょうか。
この曲に込められたメッセージは、永遠に我々にのしかかってくるのでしょう。

 

 

 

 

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