深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞解説】Last Flowers / Radiohead - 孤児院にひとりぼっちの子供

湊かなえ原作の日本映画『告白』のテーマソングに使用された。
In Rainbows』のDisc2に収録されている。
トム曰く、孤児院をイメージして書いた曲だという。

【歌詞】

Appliances have gone berserk
I cannot keep up
Treading on people's toes
Snot-nosed little punk

And I can't face the evening straight
You can offer me escape
Houses move and houses speak
If you take me there you'll get
Relief, relief
Relief, relief

And if I'm gonna talk
I just wanna talk
Please don't interrupt
Just sit back and listen

Cause I can't face the evening straight
You can offer me escape
Houses move and houses speak
If you take me there you'll get
Relief, relief
Relief, relief
Relief, relief

It's too much
Too bright
Too powerful
Too much
Too bright
Too powerful
Too much
Too bright
Too powerful
Too much
Too bright
Too powerful

 

【日本語訳】 

電化製品はうなりを上げていて
ぼくにはどうすることもできない
それは人々のつま先にのしかかっていて
まるで、はなをたらしたチンピラみたいだ

ぼくは夜を直視できないんだ
あなたは逃げたらいいよって言うんだけど...
家々が動き出し、そして喋っている
もしあなたがぼくを向こうまで連れていけたら
あなたは安心できるだろうね...
安心できる...

ぼくが話をしようとしていたら
それは本当にただ話がしたいだけなんだ
どうかさえぎらないで
いすに座って聴いておくれよ

だってぼくは夜を直視できないから...
あなたは逃げたらいいよって言うんだけど...
家々が動き出し、そして喋っている
もしあなたがぼくを向こうまで連れていけたら
あなたは安心できるだろうね...
安心できる...

ああ、なんて...
なんて明るくて...
なんて力強い...
ああ、なんて...
なんて明るくて...
なんて力強い...
(※繰り返し)

【解説】

『最後の花』というタイトルの曲。このタイトル自体はトムが「オックスフォードにある病院への道にある看板から取った」らしく、おそらく何かしらの悲しみを象徴する言葉として引用したものだと考えられます。(参照元

曲は、孤児院でひとりぼっちの子供を主人公に見立てたものになっています。

 

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子供から見た怖い夜の世界

電化製品はうなりを上げていて
ぼくにはどうすることもできない

(中略)

ぼくは夜を直視できないんだ
あなたは逃げたらいいよって言うんだけど...
家々が動き出し、そして喋っている

 

主人公は子供によくある恐怖心を抱いています。
夜になると聞こえてくる電化製品の「ジージー」という音。
家が動いているような感覚。聞こえるはずのない声。

そしてここには頼る人がいません。孤児院の先生は「そんなの幻聴よ、忘れなさい」などというだけで、真剣に向き合ってくれません。

ぼくが話をしようとしていたら
それは本当にただ話がしたいだけなんだ
どうかさえぎらないで
いすに座って聴いておくれよ

きっと主人公はべそをかきながら訴えているんでしょう。
でも結局は一人。彼は諦めたようにつぶやきます。

もしあなたがぼくを向こう(there)まで連れていけたら
あなたは安心できるだろうね...
安心できる...

この曲は、孤独な子供から見た怖ろしい世界を描いているのです。

 

この子供は一体何の比喩なのか?

トムは子供の視点でとらえた恐怖心を比喩として、何か別のものを描こうとしているようです。そして訳ではあえて「向こう」と訳しましたが、この「there」の解釈で『Last Flowers』という曲は全く異なる側面を持つことになります。

 

解釈1:職員が「手を余らせている状態」とした場合

「there」は主人公を閉じ込める場所(例えば物置や精神病院など)になります。これで職員は気を揉むことがなくなりますね。

これを軸に考えると、この曲は「自分に見えている世界を伝えても、抑圧されてなかったことにされてしまう」というテーマ性を帯びることになります。

ぼくは夜を直視できないんだ
あなたは逃げたらいいよって言うんだけど...

この世界はもう「夜(終末)」に向かっている。それを感じて警鐘を鳴らしても、周りの人間は「そんなのたいしたことじゃない」とまともに相手をしてもらえません。

電化製品はうなりを上げていて
ぼくにはどうすることもできない

これらのキーワードも、行きすぎた文明社会の比喩として機能します。
ちょうど『Cymbal Rush』で描いた「様々な問題がふきだした状態」です。
これをもとに歌詞の最後を改変してみるとこうなります。

あまりにも...
あまりにも明るくて...
あまりにも力強い... 

これらも『The Tourist』の「Hey man, slow down. Slow down.」と類似する意味として成立します。文明は行きすぎている。あまりに強くなりすぎている、と。

 

解釈2:職員が「優しく包み込んでくれる存在」とした場合

こちらは一転、救いをテーマにした話になります。
職員は優しさの象徴として描かれます。

ぼくは夜を直視できないんだ
あなたは逃げたらいいよって言ってくれるけど...

(中略)

もしあなたがぼくをそこ(安息の地)まで連れていけたら
あなたはきっと安心できるだろうね...

(中略)

ああなんて...
なんて明るくて...
なんて力強い...

孤児院の子供は、現世に囚われたトム自身の比喩だったわけです。この世界から抜け出すこと、それこそが本当に安心できる状態なんだよというメッセージなのです。

そうです。『Last Flowers』は『Lift』と全く同じテーマの歌だったのです。「ああ神様、安心して。ぼくは大丈夫だから。でもできれば正しい世界に連れて行って欲しいな」というメッセージだったのです。

終盤の「なんて明るい..」は「there」に連れて行ってもらえたあとの風景なんでしょう。トムの歌詞には、間奏後の場面転換がけっこうな頻度で登場します。『No Suprises』の「Such a pretty house. And such a pretty garden」も同じ手法ですね。

 

 

さて、みなさんはどう考えられたでしょうか。

個人的には後者の解釈の方が希望があって好きです。

 

 

 

 

【訳者注】

冒頭部分「Appliances have gone berserk」を「電化製品が暴れ狂って」と直訳せずに「うなりを上げて」としました。これは後に出てくる「houses speak」とのつながりを示したかったのも要因ですが、同じく『Paranoid Android』冒頭の「Please, could you stop the noise?」との関連性を感じたことが大きいです。

発表時期こそ10年ほどの開きがあるものの、作曲はどちらも『OK Computer』の収録時期だったそうです。

アレンジが全く違うため関連が見えにくいですが、トムとしてはあの当時から一貫したテーマを掲げているのだと改めて感じた次第です。 

 

※サムネイル画像は映画『ぼくの名前はズッキーニ』から引用しました
(c)RITA PRODUCTIONS / BLUE SPIRIT PRODUCTIONS / GEBEKA FILMS /

 

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