深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞解説】The Bends / Radiohead - トムの心からの"Help!"

デビュー2作目のアルバム『The Bends』のタイトル曲。
疎外感が全面に押し出された歌詞は、
The Beatlesの『Help!』を彷彿とさせる内容となっている。

【歌詞】

Where do we go from here?
The words are coming out all weird
Where are you now
When I need you?
Alone on an airplane
Falling asleep against the window pane
My blood will thicken

I need to wash myself again
To hide all the dirt and pain
Cause I'd be scared that there's nothing underneath
But who are my real friends?
Have they all got the bends?
Am I really sinking this low?

My baby's got the bends
Oh no
We don't have any real friends
No, no, no

Just lying in the bar with my drip feed on
Talking to my girlfriend, waiting for something to happen
I wish it was the '60s, I wish I could be happy
I wish, I wish
I wish that something would happen

Where do we go from here?
The planet is a gunboat in a sea of fear
And where are you?
They brought in the CIA
The tanks and the whole marines
To blow me away
To blow me sky high

My baby's got the bends
We don't have any real friends

Just lying in the bar with my drip feed on
Talking to my girlfriend, waiting for something to happen
I wish it was the '60s, I wish I could be happy
I wish, I wish
I wish that something would happen

I wanna live, breathe
I wanna be a part of the human race
I wanna live, breathe
I wanna be a part of the human race
Race, race, race

Where do we go from here?
The words are coming out all weird
Where are you now
When I need you?

 

【日本語訳】

ぼくらはここからどこに向かうんだ?
そんな言葉がふいについて出てくる
きみはいまどこにいるんだ?
ぼくが必要としているのに
ぼくは飛行機にひとりぼっち
窓ガラスによりかかって眠りに落ちながら
ぼくの血は濁っていく

ぼくはもう一度ぼくを洗い流さなきゃ
よごれと痛みを隠すために
だって足元になにもないのが怖いんだ
でも本当の友人って誰なんだ?
みんな”bends”(※1)になってしまったのか?
ぼくはちゃんと降りていってるのか?

ああ 彼女も”bends”になってしまった
なんてこった
やっぱり本当の友人なんていないんだ
いやだ、いやだ!

ぼくはバーで点滴(※2)を入れながら
ガールフレンドと話している
そして何かが起きるのを待ってる
ああ いまが60年代だったらなあ
きっと幸せになれただろうに
ああ...ああ...
ぼくは何かが起こるのを待ってる

ぼくらはここからどこに行く?
この星は恐怖の海を漂うガンボード(※3)
なあ、きみはどこにいるんだ?
やつらはCIAに運び入れた
戦車一式と全海軍を
ぼくを吹き飛ばすために
空の彼方へ吹き飛ばすために

ああ 彼女も”bends”になってしまった
もう友人はいなくなってしまった!

ぼくはバーで点滴を入れながら
ガールフレンドと話している
そして何かが起きるのを待ってる
ああ、いまが60年代だったらなあ
きっと幸せになれただろうに
ああ、ああ
ぼくは何かが起こるのを待ってる

ぼくは生きたい、呼吸をしたい
ぼくは人類の一部になりたい
ぼくは生きたい、呼吸をしたい
ぼくは人類の一部になりたい
人類の…人類の…

ぼくらはここからどこに向かうんだ?
そんな言葉がふいについて出てくる
きみはいまどこにいるんだ?
ぼくが必要としているのに…

 

※1 “bends”:減圧症

※2 in the bar with my drip feed on:"drip feed"は点滴の意味。とあるバーに点滴をモチーフとしたカクテルがあったらしい。自身を病気と揶揄した言葉遊びだろう
※3 ガンボード:機関銃を搭載した船

 

【解説】

アルバムの表題ともなっている”bends”。その意味は「減圧症」です。

減圧症(げんあつしょう)

気圧の高い場所から低い場所に急に移動した際に体内に気泡が形成されることによって生じる症状。(中略)麻痺やけいれん,運動障害やめまい,しびれ,吐き気,言語障害などの症状が現れることがある

出典:ブリタニカ国際大百科事典 

 なぜ『Creep』で人気絶頂となった彼らが、こんな不気味な病名を曲名に、そしてアルバムのタイトルにしたのでしょうか?

 

早すぎた「成功」という名の疎外感

デビュー作『Pablo Honey』(もとい『Creep』)で、一躍トップスターに駆け上がったレディオヘッド。順風満帆に見えるその裏で、彼らは苦しみもがいていました。

『Creep』を求める世界ツアーによって、彼らの周囲は激変してしまったのです。仲良くしていた友人たちとは疎遠になり、目にするのはどこぞの誰とも知らない”ファン”たちだけ。そしてたいして気に入っていない曲を延々と演奏し続ける毎日。

この環境の変化は、彼らにとって好ましいものではありませんでした。『Pablo Honey』は半ば無理やり作らされたようなアルバムでしたし、それが世間に受け入れられることは彼らにとっては望んだものではありませんでした。本当に言いたいことは言えず、その代償にいろいろなものを差し出さなければいけませんでした。そんな状況に対する怒りを、トムは曲として書きなぐりました。それが『The Bends』なのです。

 

"The Bends"はRadioheadによる"Help!"

"bends"は前述の通り「減圧症」を指します。この症状は、気圧の高いところから低いところに移動した際に起こります。

例えば、潜水夫が海底から急に海面に上がったとき、あるいは、飛行機が機内を密閉する前に離陸して、空高く上昇してしまったときに生じます。

トムはバンドの状況を、まるで急上昇した飛行機の中にいるみたいだと考えました。以前は正しい場所にいたのに、いまは間違っている場所に来てしまったと。そして、そばにいたはずの友人たちは、成功という名の急激な上昇によって"bends"にかかって姿を消してしまったんだと。

みんな”bends”になってしまったのか?
(中略)

ああ、彼女も”bends”になってしまった
なんてこった
やっぱり本当の友人なんていないんだ
いやだ、いやだ!

この「空気の薄さ」は人間関係の比喩としても機能しています。ライブ、ファン、そして音楽業界の「空気」は薄く、友人の安心感とは程遠いものでした。彼らは成功の裏で、必死に生きている実感を求めていたのです。

冒頭の動画は1994年当時のライブ映像ですが、ご覧の通りトム・ヨークは怒りと悲しみに満ちています。まるでジョン・レノンが『Help!』で心の内をさらけ出したように、Radioheadも心の底から助けを求めていたのです。

ぼくらはここからどこに向かうんだ?
そんな言葉がふいについて出てくる
きみ(※)はいまどこにいるんだ?
ぼくが必要としているのに… 

まだ『OK Computer』も『Kid A』も世の中に存在しなかった時代です。当時の彼にとっては、先の見えない未来はただただ不安でしかなかったことでしょう。

ちなみに、この部分の歌詞の「きみ」は単にガールフレンドを指しているかもしれませんし、『Creep』で片思いをしていた女性をまだ引きずっているだけかもしれません。はたまた『Lift』でも登場した「天使的な何か」を求めているのかもしれません。

曲の最後の盛り上がりでトムは次のように叫びます。

ぼくは生きたい 呼吸をしたい
ぼくは人類の一部になりたい
人類の…人類の…

彼には心の拠り所が必要だったのです。「生きている」という実感、そして「所属している」という実感。

これはマズローの5段階説でいうところの「欠乏欲求」です。あのピラミッドの土台部分。人間が最低限求める、本当につつましい欲求です。こんなセリフ、とても成功した人間の言葉とは思えません。

 

The BeatlesといいRadioheadといい、急激な成功は強烈な圧力として人間を押しつぶすものなのでしょうか。でもその圧力のおかげで彼らは成長・変化し、その後の音楽革命を起こすことができたのも事実です。

これは皮肉なのか、はたまた運命なのか...。

何にせよ、トムがバンドを解散しなくて本当に良かった。それだけは確実に言えます。

彼らには本当に感謝しかありません。

ありがとうトム!ジョニー!コリン!エド!フィル!

 

 

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