深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞和訳】No Suprises / Radiohead - 死んだって、待っている世界はろくでもないんだ

『OK Computer』からのシングルカット。
ガラスに映った歌詞が上方に流れ、1番のサビを迎えるとガラスの金魚鉢は水に満たされる。
水が引いた後、トムは自信に満ちた表情で残りの歌詞を歌い上げる。

【歌詞】

A heart that's full up like a landfill
A job that slowly kills you
Bruises that won't heal
You look so tired, unhappy
Bring down the government
They don't, they don't speak for us
I'll take a quiet life
A handshake of carbon monoxide

With no alarms and no surprises
No alarms and no surprises
No alarms and no surprises
Silent, silent

This is my final fit
My final bellyache

With no alarms and no surprises
No alarms and no surprises
No alarms and no surprises, please

Such a pretty house
And such a pretty garden

No alarms and no surprises (let me out of here)
No alarms and no surprises (let me out of here)
No alarms and no surprises, please (let me out of here)

 

【日本語訳】

埋め立て地みたいに一杯になった心
君をゆっくりと絞め殺す仕事
癒えることのない傷
君はとても疲れて、不幸せに見えるよ
政府を倒すんだ
彼らは決して僕たちのために喋ったりしない...
僕は静かな生活を送るよ
一酸化炭素と手を取り合って

脅かされることも...何事もない
脅かされることも...何事もない
静けさの中で...

これがぼくの最後の発作
これがぼくの最後の痛み

脅かされることも...何事もない
脅かされることも...何事もない

ああ、なんて綺麗な家...
ああ、なんて美しい庭...

脅かされることも...何事もない(ここから出してくれ...!)
脅かされることも...何事もない(ここから出してくれ...!)

 

【解説】 

「皮肉さ。まったくの皮肉」

心地いいアルペジオと、トムの優しい歌声が印象的な『No Suprises』ですが、
この歌はその美しさに反して、自殺をテーマにした歌になっています。

後にトムはこう語っています。

「皮肉さ。まったくの皮肉。これ以上無理っていうくらいにね。あの曲をまんま解釈するなんてできるわけないよ。それと同時に、ああいったことってシニカルな形でしか表現のしようがないんだよね。」

(引用元:TRACK BY TRACK BY THOM) 

 

逃げ出した先にすら救いはない

歌詞を追っていきましょう。

生きにくい世の中で、主人公は鬱々とした感情を抱いています。
彼はこの世から逃げ出すことを決意します。一酸化炭素を吸って。

彼は窒息死し、見事この世から(絶え間ない苦しみから)抜け出すことに成功します。そして目を覚ましたところでつぶやきます。

ああ、なんて美しいんだ」と。

映像の中でトムが安堵に満ち溢れた表情を浮かべるシーンですね。

しかし、ここで気付くわけです。もう決して後戻りできなくなったことを。

そしてこのリフレイン。 

これでもう脅かされることもない...
(いやだ...!ここから出してくれ...!)

彼はこれから、自分の犯した過ちを未来永劫、悔やむことになるわけです。
逃げ出したところで救いなんてないのです。

「美しい庭」なんて幻想なのです。なんという皮肉なのでしょうか。

 

『生きにくい人たちへ。
この世はくだらなく見えるかもしれない。

でも生きるしかないんだ。
死んだって、待ってる世界はもっとろくでもないんだから。』

 

トムは自らの死を提示することで、そう我々に語りかけているのです。

この曲に関しては、悲しすぎてこれ以上語ることはできそうにありません...。