深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞解説】Ful Stop / Radiohead - 人類に終止符を打ってしまうもの

『A Moon Shaped Pool』唯一のギターロック。メインギタリストのジョニーが作曲したと言われる。
『Identikit』とともに前作『The King of Limbs』ツアーから演奏されていた曲。
(初披露は2012年シカゴ公演)

【歌詞】

You really messed up everything
You really messed up everything
If you could take it all back again
Strike up the tinderbox
Why should I be good if you're not?
This is a foul tasting medicine
A foul tasting medicine
To be trapped in your full stop

Truth will mess you up, truth will mess you up
Truth will mess you up, truth will mess you up
Truth will mess you up, truth will mess you up
Truth will mess you up, truth will mess you up
Truth will mess you up (All the good times)
Truth will mess you up
(*repeat)

When you take me back
Take me back again
When you take me back
Take me back again

You really ...
You really ...
 

【日本語訳】

お前は全てをめちゃくちゃにした
お前は全てをめちゃくちゃにした
もしお前が全部なかったことにできたとしても
俺が火種をぶちまけるよ
お前がいないなら、俺は良い子でいる必要なんてないんだ
これはひどい味の薬だ
ひどい味の薬だ
お前が打った終止符に捕らわれてしまう

真実はお前を破滅させる
真実はお前を破滅させる
※繰り返し

真実はお前を破滅させる
真実はお前を破滅させる
(ああ 良い頃合いだ)

お前が俺を連れ戻したら...
お前が俺を連れ戻したら...

 

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【解説】 

『Moon Shaped A Pool』唯一のディストーションギターによるロックソングとなっています。その攻撃的な音楽性は『Sit down, Stand up』や『Feeling Pulled Apart by Horses(※)』を彷彿とさせます。

※『Feeling Pulled Apart by Horses』は『Reckoner』の原型として制作された曲。Radioheadとしては未発表曲。(のちにトムのソロプロジェクトAtoms For Peaceで音源化)

 

この曲は解釈に悩みます。歌や音楽からは『Hail To The Thief』時代に見られた「政治への怒り」を感じるのですが、それが具体的に何を示しているのか非常に捉えがたいのです。破壊的でもあり、ジャーナリズム的でもあります。

考えられるストーリーとしては、以下のようなものでしょうか。

 

【解釈1:権力を振りかざし、全てを隠蔽する政治家/権力者への挑発】

「You」を「権力者」として解釈した場合。

多くの犠牲の上でのうのうと生きる彼らを批判した歌となります。「Full Stop(終止符)」とは本来あるべきはずの犠牲者たちの未来を奪ったという意味でしょう。そして真実が明るみに出た時、次に破滅するのはお前自身だぞという挑発になります。

ただこの場合「When take me back...(お前が俺を連れ戻したら)」の「俺」が誰なのか、そして一体何をするのかが全くわかりません。

 類似曲:『We Suck Young Blood』
  役のために身を買われるハリウッド俳優/女優を描いた曲

 類似曲『Cymbal Rush(Thom Yorke)』
  世界の終わりを引き起こした無自覚な政治家を描いた曲

 

【解釈2:この世界を破滅させつつある人間に対する警鐘】

「You」を「人類」として解釈した場合。

我々人類が世界をめちゃくちゃにしていることへの警鐘として捉えることができます。「ひどい味の薬」は、表面上は役に立つ薬(つまりは毒)のことであり、例えば歪んだ経済活動や、行きすぎた技術進化の比喩として成立します。そしてそれら自身が人類の行く末に終止符を打ってしまうんだと。

そうしてみると「真実」は「ひどい味の薬」の延長線上にあるものであり、例えば地球環境の不可逆的な崩壊や、技術的なシンギュラリティなどを表していると捉えられます。

そして先ほどの「When take me back...」ですが、「me」は圧倒的な力を持っており、この状況を変えることができる存在ということになります。それはきっと「超越的な存在(神)」なのでしょう。「お前が俺を連れ戻したら(お前たちを一掃してやるぞ)」という怒りを言外で表現しているのです。

 類似曲:『Lift
  超越的な視点から、この世界に囚われた主人公を救う曲

 

今回は決め手がないため、2つの解釈をもって結びとさせていただきます。

ただ曲からは相当の悲哀と怒りを感じるため、『解釈2』の方がこの曲を聴く上では正しいのではないかと感じています。

みなさまよりアドバイスいただければ幸いです。

(良い解釈が見つかったら再掲します)

 

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