深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞和訳】Kid A / Radiohead - 「少年A」が意味するものとは?

「Kid A」はレディオヘッド4作目のアルバム『Kid A』の表題曲。ギターロックで世界を変えた彼らが、全ての楽器を捨て、コンピューターだけで作り上げた記念碑的楽曲。

この記事では「Kid A(少年A)」の意味を独自の解釈で解説しています。

 

和訳

ぼくはそっと立ち去る
意味のない言葉につまづきながら

ぼくらは棒のついた顔を得た
あんたらは腹話術師を得た
ぼくらは棒のついた顔を得た
あんたらは腹話術師を得た

あんたらはベッドの端の影に立ってる
あんたらはベッドの端の影に立ってる
あんたらはベッドの端の影に立ってる
あんたらはベッドの端の影に立ってる

ねずみも子供も ぼくらについて街を出ることになる
ねずみも子供も ぼくらについて街を出る
さあおいで 子供たち


歌詞

I slip away
I slipped on a little white lie

We've got heads on sticks
And you've got ventriloquists
We've got heads on sticks
And you've got ventriloquists

Standing in the shadows at the end of my bed
Standing in the shadows at the end of my bed
Standing in the shadows at the end of my bed
Standing in the shadows at the end of my bed

The rats and the children will follow me out of town
Rats and children follow me out of town
Come on, kids

 

解説

キーワード解説

"little white lie" は、一般的に「優しい嘘」とか「罪のない嘘」と訳されますが、もっと一般的な「社交辞令(思ってもないこと)」のニュアンスが含まれます。ここでは、上面だけの中身がない言葉をイメージしましょう。

続く"heads on sticks"は、棒の先に顔のついた人形と考えるのが自然でしょう。海外の解説サイトでも、生首を槍に刺したグロテスクなイラストが散見されますが、次節の"ventriloquists"(腹話術師)というキーワードから、ここには暴力的な意味というより、コミカルな意味合いで捉えるのが正しいでしょう。

(ちなみに"head"は「頭」と訳されるので、髪のある部分を指すと思われがちですが、本当は「首から上の部分」を指す言葉です。ここではややこしいので「顔」と訳しています)

 

人形と腹話術師は何を意味している?

顔だけの人形は、自分で喋ることができません。
腹話術師は、他人に好きなように喋らせることができます。

この歌詞は、物言えぬ立場の人間に対し、メディアが好き放題に語る姿を揶揄した一節なわけです。これはレディオヘッド(もといトム・ヨーク)自身が、メディアに奇人扱いされ、何を言ってもまともに聞き入れられなかった過去を表していると同時に、同じく弱い立場の人間たちが、いまもいわれのない誹謗中傷を受け続けていることを表しています。

 

Kid Aの正体とは?

次の一節を見てみましょう。

Standing in the shadows at the end of my bed

(誰かが)ぼくのベッドの端の影に立ってる

この"Standing in the shadows"という一節。巷では幽霊や幻覚などと解釈されていますが、これは「ものを言えない立場の人間」が抱く強迫観念と捉えるのが良いでしょう。

というのも、9枚目のアルバム『A Moon Shaped Pool』の「Burn The Witch」にとても近い表現が出てくるんです。

Stay in the shadows
Cheer at the gallows
This is a round up

影にとどまり
絞首台に歓声を上げろ
さあ狩りの時間だ

実はこの楽曲も『Kid A』と同時期に作られた作品でして、「Burn The Witch」では、大衆が魔女を容赦無く攻撃する姿が描かれています。人々は安全な場所(影の中)にいながら、魔女狩りを賛美してしまっている世界です。とても似ていますよね。

そしてときとして、その標的になった者は、人権を持った人間として扱われません。人形のように図式化された存在として扱われるのです。本人たちがどんなことを感じ、どんな苦しみを得ているかなど意に介すことなく。

そう。それこそが「Kid A」(少年A)の正体なのです。

 

ハーメルンの笛吹き男は奇人か、それとも?

だから「ぼく」は、このくだらない街から抜け出して、子供たちを連れて行くわけです。もちろんこのモチーフは、グリム童話の「ハーメルンの笛吹き男」です。トムたちも笛吹き男がやったように、彼らの最も大事な子供たちを連れ出すことで仕返しをしているわけです。同時にこれはただの嫌がらせではなく、純真な子供達を救い出すという意味も兼ね備えています。(これは同アルバムの「idioteque」でも、核戦争から真っ先に救うべき対象として子供たちを挙げていることからも伺えます)

 

『Kid A』というアルバムは、レディオヘッドが初めて政治的な意図を隠さずに制作された作品です。「Kid A」のほかにも、「Optimistic」や「Idioteque」など、現代社会を痛烈に批判した楽曲がたくさん収録されているので、ぜひこの機会に聴きなおしてみてはいかがでしょうか。

 

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