深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞和訳】Free In The Knowledge / The Smile - 僕らなら乗り越えていけるよ

The Smileの新曲「Free In The Knowledge」の和訳、解説です。
トムが新たな領域に足を踏み入れましたね。
PVでは、一人の男性の拭い去れない後悔が描かれています。

【歌詞】

Free in the knowledge that one day this will end
Free in the knowledge that everything is change

And this was just a bad moment
We were fumbling around
But we won’t get caught like that
Soldiers on our backs
But We won’t get caught like that

A face using fear
To try to keep control
When we get together
Well, then who knows

If this is just a bad moment
And we are fumbling around
But we won’t get caught like that
Soldiers on our backs
We won’t get caught like that

I talk to the face in the mirror
But he can't get through
I said "It's time that you deliver
We see through you"

I talk to the face in the mirror
But he can't get through
Turns out we’re in this together
Both me and you

 

【和訳】

楽にしなよ いつの日か終わるから
楽にしなよ すべては変わるんだから

かつて 良くない時期があった
ぼくらは 手探り状態だった
でもぼくらは つかまることはない
兵士が後ろに立っていても
ぼくらは つかまることはない

恐怖を利用して
コントロールしようとする者
でもぼくらが ともにいるなら
知ったことじゃないんだ

もしいまが 良くない時期で
ぼくらは 手探り状態だとしても
ぼくらは つかまることはない
兵士が後ろに立っていても
ぼくらは つかまることはない

ぼくは話しかける 鏡に映る顔に
でも彼は 出てこれない
ぼくは言う いまが君の出番だと
ぼくらが見届けるから

ぼくは話しかける 鏡に映る顔に
でも彼は 出てこれない
何が起きても ぼくらは仲間だから
ぼくも きみも

 

解説

トムがこんなに「together」と唄う日が来るなんて。驚きと感動が一緒になだれ込んできました。言うまでもなくこの楽曲は、現代の困難な状況に対して、人々が手を取り合って生きる大切さを唄った楽曲です。

細かい解説は野暮になりそうなので、今回はほんの少しだけ。レディオヘッドでは語られなかっただろう、最後の余韻の部分です。

I talk to the face in the mirror
But he can't get through
ぼくは話しかける 鏡に映る顔に
でも彼は 出てこれない

(中略)

Turns out we’re in this together
Both me and you
何が起きても ぼくらは仲間だから
ぼくも きみも

いままで「鏡の中の彼」に何もできなかった自分。「彼」は出てこれなくても、ぼくらは仲間だ、とトムは言うのです。現代の困難な状況では、安全なんてどこにもなく、誰しもが当事者になり得る。だからこその「together」なんです。向こうもこちらもない。そう思うことができれば、自然と手を取り合うことができるのだ、とトムは訴えているわけです。

ソロ演奏時との歌詞の違いについて

この楽曲は、2021年暮れに、ロイヤル・アルバート・ホールにてソロ演奏で公に初披露されました。演奏前のトークも珍しいですね。わたしたちはもちろんのこと、きっとトム自身も久しぶりにライブできるのを楽しみにしてたのですね。冒頭のメッセージから、トムがこの1年半、一人のアーティストとしての自身を見つめ直したことが伝わってきます。静かでいて、そして強い決意を胸に秘めていることも。

※記事の最後にトムのメッセージの対訳も載せています

スタジオ収録版が出て気付いたのですが、トムがほんの少しだけ歌詞を変えているんですよ。それは1番のサビ冒頭です。

◆ソロ演奏版

And this is just a bad moment
We are fumbling around
いまはただ 良くない時期
ぼくらは 手探り状態

◆スタジオ収録版

And this was just a bad moment
We were fumbling around
かつて 良くない時期があった
ぼくらは 手探り状態だった

現在形が、過去形に変わってるんですよ!

なんだそんなことかと思われるかもしれませんが、個人的にはかなり心温まるエピソードでした。

ソロ演奏時が昨年末なので、それから数ヶ月、トムなりに現在の状況を一歩引いて捉えることができてきたということでしょう。一時期の彼からは、悲壮感が漂っていたので...。(新曲「Plasticine Figures」でテレビにリモート出演したときは特に...)

きっとThe Smileの活動や、社会との関わりを通して熱意を取り戻してきた、そんなふうに思うのです。この心境の変化は楽曲制作にも生きてますよね。(こんなに一気にアルバム制作が進むなんて!)

また、これにより、2番のサビの重みが増すことになりました(2番は以前と同様、現在形のままです)。「かつて困難を経験したのだから、もし、いまが苦しいとしても、僕らなら乗り越えていけるよ」というポジティブなメッセージへと生まれ変わったのです!

この楽曲は、新たな代表作として今後も語り継がれることでしょう。またいつか、みなで一緒に笑い合える日がくるまで。

 

【おまけ:演奏冒頭のメッセージ】

ごきげんよう。
一年半前を思い返すと、またこうしてステージに立つことが正しいのかわかりません。

これがパンデミックが起きてから初めてのステージ。

この間、たくさんのことが起きたね。
ぼくはイギリスのミュージシャンだから、パンデミックの間、すべてのイギリスのミュージシャンとともに、(他の職につけるような)再教育を受けるべきだと言われたり。(※1)

(一同笑)

そしてぼくらがいなくなったら(※2)、今度は、ぼくらががいままでやっていたような、ヨーロッパツアーなんて全く必要ないと言われたね。

だからいまやおそらく、ぼくは消えゆく種族の一人なんだろう。

ぼくはこの曲を捧げたい。新しいバンド「The Smile」と作ったこの曲を。
同じ時代を生きる仲間のUKミュージシャンたちに

「Free In The Knowledge」という曲です。

 

<注釈>

※1 ・・・ イギリス政府の発言を受けた揶揄
(関連記事:リアム・ギャラガーやジョニー・マーら、コロナ禍での職業変更を促す財務相の発言を批判 | NME Japan

※2 ・・・ イギリスのEU離脱のこと

 

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