深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞和訳】Skrting On The Surface / The Smile - ぼくらを修復できないと気付いたとき

The Smile 3曲目のシングル。2009年にアトムス・フォー・ピースのショーでトム・ヨークが披露されてから、実に13年越しにスタジオ収録された。トム・スキナーの跳ねるようなリズムを得て、曲本来の透明感のあるアレンジに仕上がった。

【歌詞】

When we realise, we have only to dive, then we're out of here
We're just skirting on the surface
We have only to click our fingers and we'll disappear
We're just skirting on the surface

Dull eyes trying to pull you through the ice
Being drawn to the ledge
When we realise that we're broken and nothing mends
We can drop under the surface

When we realise we're merely held in suspension
'Til someone comes along and shakes us
As the pattern lines cross our fingers like a web
Do we die upon the surface?

Dull eyes trying to pull you through the ice
Being drawn to the ledge
When we realise that we're broken and nothing mends
We can drop under the surface

・SkrtSkirt
中心に近づかず、まわりをうろうろしている姿
・The Surface
(物の)表面

【和訳】

ぼくらは飛び込むしかなく 投げ出されると気付いても
ぼくらはまだ うわべをさまよっている
指を鳴らすだけで ぼくらは消えてしまうのに
ぼくらはまだ うわべをさまよっている

死んだ目が きみを氷の中に引き込もうとしている
崖っぷちに 引き寄せられながら 
ぼくらはもう だめになっていて 修復できないと気付くとき
ぼくらは 内側に降りることができる

ぼくらは 宙吊りにされてるに過ぎないと気付くとき
誰かがやってきて 私たちを揺さぶるまで
網のような格子模様が ぼくらの指を横切るとき
ぼくらは この表面で死ぬのだろうか?

死んだ目が きみを氷の中に引き込もうとしている
崖っぷちに 引き寄せられながら 
ぼくらはもう だめになっていて 修復できないと気付くとき
ぼくらは 内側に降りることができる

 

【解説】

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Skrting on the Surfaceの意味とは?

タイトルの直訳は「表面をさまよっている」です。

これは「表面(The Surface)」の解釈次第で、いろいろな意味に取れますね。例えば「地上(地球の表面)」や「うわべ(本質の表面)」など。

 

ひとつの解釈としては、気候変動への警鐘です。

死んだ目が きみを氷の中に引き込もうとしている
崖っぷちに 引き寄せられながら 

これらを直喩と捉えると、やはり地球に住めなくなる危機感を歌っているように聴こえます。

 

異なる解釈としては、問題を先送りにする愚かさへの批判でしょうか。

ぼくらは飛び込むしかなくて 投げ出されると気付いても
ぼくらはまだ うわべをさまよっている

(中略)

誰かがやってきて 私たちを揺さぶるまで

本質的な議論を先送りにし、その挙げ句、誰かに決めてもらうまで動かない、他力本願の人々の姿を描いているようです。(ここにはキリスト的教義も見え隠れしています)。あるいは、今年のCOP26(気候変動枠組条約締約国会議)も無意味に終わったと批判していたトムのことなので、単に両者を混ぜているかもしれません。

 

また、全く異なる解釈もできます。
曲のアレンジの浮遊感や厭世観からすると、心の内面をうたった歌なのかもしれません。それはきっと、互いが本質的にわかり合おうとせず、うわべだけの交流になってしまっている、現代社会の冷たいコミュニケーションへの疑問なのです

 

そして最も重要なのは、ここには希望があるということです。

ぼくらはもう だめになっていて 修復できないと気付くとき
ぼくらは 内側に降りることができる

この事実を認めるときうわべではない正しい世界に生きることができる

PVの中でトムが、崩れた壁を修復しようと必死になっているのは、きっとそういうことだと思うのです。

 

後記

過去のライブを追ってみると、楽曲のアレンジが洗練されたのと同様、歌詞についても大枠は当初のものを踏襲しながらも、ところどころ調整されているんですよね。はじめは単なる社会課題への言及として作詞したものを、時代に合わせて意味を加えていったのでしょう。

ちなみに`Skirting`を`Skrting`と母音省略するのには意味があるのでしょうか?

トムはよくこういうことをするのですが、ニュアンスを掴めていないんですよね・・・(イギリスでは一般的な表現なのでしょうか?)

英語文化に詳しい方がおられましたら、お教え下さい・・。

 

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