深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞解説】Decks Dark / Radiohead – 大切なものを壊してしまった後悔

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『A Moon Shaped Pool』の3曲目。
子守唄のような歌声は、徐々に不穏さを纏い始める。
ミニマルながら、Radioheadの魅力をすべてを詰め込んだような作品。

【歌詞】

Then into your life, there comes a darkness,
There's a spacecraft blocking out the sky.
And there's nowhere to hide.
You run to the back and you cover your ears,
But it's the loudest sound you've ever heard,
And all we trapped rag doll cloth people,
We are helpless to resist Into our darkest hour.

But it was just a laugh, just a laugh, Just a laugh, just a laugh
Even at this angle
And so we crumble
A ten ton head made of wet sand, Oh, this dread circumference,
You've gotta be kidding me,
The grass grows over me,
Your face in the glass in the glass.
It was just a laugh, just a laugh
It's whatever you say it is,
In split infinity

Then into your life, there comes a darkness,
And a spacecraft blocking out the sky.
And there's nowhere to hide.
You run to the back and you cover your ears,
But it's the loudest sound you've ever heard,
Into your darkest hour.

When you've had enough of me,
When you've had enough of me,
Sweet Times.
When you've had enough of me,
When you've had enough of me,
Sweet Times,
Sweet times,
Sweet Times,
Sweet times.

【日本語訳】

そして あなたの人生に 暗闇がやってくる
宇宙船が 空を覆っていて
隠れる場所はどこにもない

あなたは後ずさり 両の耳を塞ぐ
いまだかつて聞いたこともない 爆音が鳴り響く

囚われた私たちは ぬいぐるみの服を着ていて
みなが堕ちていくのを 止めることができずにいた
「最も暗い時間」へと...

だがあなたはただ 笑っていた 笑っていた 笑っていた 笑っていた
こんな場所でさえ
だから ぼくらは ばらばらに砕いた
湿った砂でできた10トンの頭を ああ なんという惨状
冗談だと言ってくれ
草が伸びて私を覆う

鏡の中の 鏡に映る あなたの顔は
笑っていた 笑っていた
あなたがそれをなんと言おうと
無限に続く穴の中で…

そして あなたの人生に 暗闇がやってくる
宇宙船が 空を覆っていて
隠れる場所はどこにもない

あなたは後ずさり 両の耳を塞ぐ
いまだかつて聞いたこともない 爆音が鳴り響いた
あなたは堕ちていく
「最も暗い時間」へと...

あなたが私に愛想を尽かしたなら
あなたが私に愛想を尽かしたなら
あなたの時間を

あなたが私に愛想を尽かしたなら
あなたが私に愛想を尽かしたなら
あなたの時間を
あなたの時間を
あなたの時間を
あなたの時間を

【解説】

「Decks Dark」という曲名は、直訳すると「暗闇の甲板」です。
海をいく船の甲板が暗闇。「進む先が見えない」というイメージでしょうか。

この曲が収められた『A Moon Shaped Pool』というアルバムは、厭世的であり、人間が持つ愚かさを描いた作品でした。この曲も多分に漏れず、レディオヘッドの歌詞力ここに極まれりといった曲になっています。

最も暗い時間

本作の冒頭だけを聴くと、穏やかさを描いた曲に聴こえますが、歌詞はこれ以上なく不穏なものとなっています。そして、曲中盤の不穏な曲調(そして聖歌のようなコーラス)と、曲終盤の荒々しいギターメロディは、その世界観を見事に表現しています。

この歌は、最も大切なものを自らの手で壊してしまった後悔を表現しています。

気がついたでしょうか? この曲には2度の「Darkest Hour(最も暗い時間/夜明け前の暗闇)」が出てきますが、実はその主語が変わっているんです。

1番は「Our Darkest Hour(我々の)」であり、2番は「Your Darkest Hour(あなたの)」なんです。(『Karma Police』みたいですよね)

では「Darkest Hour」は何を表しているんでしょうか?

おそらくこれは「取り返しのつかない状況」の暗喩のようです。

心の支えを葬った人々

結論から言うと、これは神を殺してしまった人間の歌なのです。

もちろんトムたちはキリスト的な神を示したいわけではないので、ここでは人間の存在を超えた「人間にとっての支えであったもの」と捉えて良いでしょう。

だから ぼくらは ばらばらに砕いた
湿った砂でできた10トンの頭を

この部分の(不穏な曲調に載せて歌われる)歌詞が、人間たちが自ら神を殺してしまった瞬間を描いています。ちょうどトムが『Before Your Bery Eyes』(2013)のPVで表現していた世界観とも重なりますね。

Atoms For Peace - Before Your Very Eyes

本PVでは、神(地球)を模したトムが、人間の文明に追いやられる形で崩れ落ちていき、支えを失った人間社会自身もまた崩壊していく姿が描かれます。

上記の作品と同様、『Decks Dark』では、人々の心はすでに失われており、自らの手で未来を壊そうとしているのです。

囚われた私たちは ぬいぐるみの服を着ていて
みなが堕ちていくのを 止めることができずにいた
「最も暗い時間」へと...

そして神が「(人間をあざけ)笑っている」と感じ、自らの手で殺めてしまう。そして後になって気付くのです。

ああ なんという惨状
冗談だと言ってくれ
草が伸びて私を覆う

もちろん神殺しは比喩であり、これはかねてから彼らが警鐘を鳴らしている、地球環境の破壊であったり、資本主義社会における人間性の放棄を表しています。

ここで物語の真相が明かされます。

そして あなたの人生に 暗闇がやってくる
宇宙船が 空を覆っていて
隠れる場所はどこにもない

1番の歌詞で唐突に登場した「宇宙船」は、実は私たち人間自身(科学文明)の比喩だったのです。主人公が追われているように描いておきながら、実は追っているのは私たちだったわけです。本当に『Karma Police』みたいですよね。

最後のリフレインは後悔の念です。

あなたが私に愛想を尽かしたなら
あなたの時間(Sweet Time)を

失った心の支えを偲んで、「(もうあなたは自由だから、心置きなく)あなたの時間を(過ごしてください)」と祈っているのです。

先に述べた通りこの歌は、最も大切なものを自らの手で壊してしまった後悔を表していると思われるので、愛する人をなくしてしまった後悔や、人生の良き日々を偲ぶ歌として解釈しても良いと思われます。

もしかしたらその方が味わいがあるかもしれませんね。

『A Moon Shaped Pool』は、彼らの集大成にふさわしいアルバムです。
1曲1曲、目立たないながら、実のところ、とても深みがある作品なので、改めて聴いてみてはいかがでしょうか。

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