深読み、Radiohead通信|歌詞和訳と曲の解釈

Radioheadの歌詞を和訳してます。トムの心境やバンドのエピソードも交えながら「こう聴くとめちゃ深くなるよ」といった独自解釈を添えてます。

【歌詞解説】The National Anthem / Radiohead – いまや国をまとめ上げるのは忠誠心ではない

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歌詞

Everyone
Everyone around here
Everyone is so near
It's holding on
It's holding on

Everyone
Everyone is so near
Everyone has got the fear
It's holding on
It's holding on

It's holding on
It's holding on
It's holding on

和訳

みんな
ここにいるみんな 
みんながまとまって
もちこたえている
もちこたえている

みんな
みんながまとまって
みんな不安を抱いて
もちこたえている
もちこたえている

もちこたえている
もちこたえている
もちこたえている

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解説

The National Anthem は「国歌」という意味です。
英国では「God save the Queen(神よ女王陛下を守り給え)」、日本では「君が代」ですね。

この曲はRadioheadなりの「国歌」なわけです。
もちろんそれは皮肉に溢れたものです。

長い混乱の果てに Everyting in Its Right Placeを書き上げたあと、トムは本来の自信を取り戻しました。閉ざしていた心を広げ、そして顔を上げました。そうして目に飛び込んできたのは、人が虚ろに行き交う道路であり、正気をなくした町であり、威光を失った国の姿そのものでした。

彼はいままで、自分はちっぽけでみじめな存在だと感じていました。世界は自分を蹂躙する、とてつもなく大きな存在だと思っていました。だがどうしたことでしょう。彼は気付いてしまったのです! 世界はこんなにも不安定で、破綻しているということに

「まとまっている(Everyone is so near)」という歌詞がとても印象的ですよね。この言葉が表しているのは決して「心がひとつにまとまっている」という意味ではありません。「人々がただ同じ場所にいる」という事実を表しているわけです。人々は何のつながりもなく、ただ同じ場所にいるだけ。王への忠誠も、貫くべき正義もない。それがRadioheadが目にした21世紀の「国」の姿だったのです。

そして、いまや国をまとめ上げるのは「不安」だけ。それは外敵への恐れなのか、将来に対する不安なのか。とにかく、自身の生活を守るための、必然的で漠然とした不安です。国民はもちろん、政治家も、資本家も、破綻に向かって突き進む国に乗っかって、ただ進むしかないのです。

この不安感は独特なベースラインをもって描かれます。
そしてブラスバンドの不協和音を用いて、破綻までの道筋が辛辣に描かれます。

(このベースラインはトムが『OK Computer』以前から温めていたリフだそうです)

「Everything In Its Right Place」でありのままの心情を表したのと同様、「The National Anthem」では、目に映ったありのままの世界を描きました。もうここにはNo Surprisesで世界から逃げ出そうとした男も、Let Downで自己を慰めようとした弱い男もいません。

この曲からレディオヘッドの第二幕が始まったのです。世界とは何であるか、人間は何をすべきなのか。そして、ロックミュージックに何ができるのか。その可能性を開いた作品でもあるわけです。

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